編集部の本棚

  ホビージャパン編集部員のお薦めの本を紹介するこのコーナー。
今回は本誌編集【征】の紹介する1冊をお届けします。

第35回:クルーズチェイサー・ブラスティー(前編、後編)
● 発行元:朝日ソノラマ● 価格:前編447円、後編510円(絶版)● 著者:堀口滋
 今回は久々に「ロボットもの」の紹介です。この『ブラスティー』は、本誌にとっても非常に関係深い作品であります(とはいっても、当時私は読者でしたが…)。『クルーズチェイサー・ブラスティー』は1986年から1987年にかけて「月刊ホビージャパン」に連載された作品です。オリジナルの小説は平野靖士氏、キャラクター&メカニックデザインは鈴木雅久氏が手掛けています。とにかくこの作品は魅力的なキャラクター&超かっこいいメカに痺れ、個人的にも非常に思い入れが強い作品です。特にブラスティーのクルージングフォームの美しさは(劇中でもキャラクターが度々触れていますが…)反則級で、個人的には未だにこれを超える美しいスタークルーザーは絶対存在しない! と思っているくらいです。
 さて、連載終了&別冊化で一段落したかに見えた『ブラスティー』。ちょっと忘れかけたころの1990年に小説化されたのであります。執筆者はその後に“堀口大明神”の通り名で知られることになる堀口滋氏。これをはじめて読んだ時点では、まさか仕事で関係することになるとは夢にも思っていませんでしたが…。
 ストーリーはホビージャパン連載版とは基本設定は同じながらも、完全に独立したオリジナルストーリーとなっています。50年前に地球から5.9光年離れたバーナード星系に飛び立った開拓団からの連絡が途絶え、その消息を探るべく、ブラスティー+クルージングキャビンで向かう調査団。その惑星エディプスで主人公フレディ・ファルコが異星人に出会う、というのが前編。さて、ここまではわりとベタな展開ですが、後編がスゴイ。フレディ達を襲った異星人カツラウと共にトラブルから脱出に失敗し、エディプスに取り残されるフレディ。敵であるカツラウとは最初はいがみ合うものの、ケンタウラーという共通の敵に立ち向かう…。あれ、相棒(バディ)モノじゃん。
 そう、後編はカツラウとフレディの男と男の友情の物語なのです。ヒロイン(?)のクリスティなんて、ほとんど出番ないし。ただ、このあたりの男の物語の運びが絶妙。何しろ二人の敵は、ケンタウラーに制御機械を取り付けられたブラスティー。なのにフレディとカツラウの武器は奪取した小型円盤(その名もブラスティー2!)とカツラウがフレディに託した剣型武器・ソールのみ。うお、燃える! 劇中ではさらにヒートアップ。敵基地に乗り込んだ二人は苦戦の末、何とかブラスティーを奪回するのですが、このあたりの物語の運びも素晴らしい。もう読んでくれ、と。主人公対奪われた主人公機というのはワリとありますが、これほど燃える展開は正直ないのでは? と思います。
 その後フレディとカツラウはブラスティーを通して友情を深めていくのですが、それまでの緊迫した展開と打って変わって大学生レベルの馬鹿騒ぎムード。酒を飲んで操縦するは、ブラスティーで風呂を作るわ、タバコを栽培するわ(!)えらい生活感が…。けど、逆にそんな他愛の無いものが、物語後半でいかに貴重な時間であったかが感じられます。一人前のパイロットに成長したフレディの前に、カツラウが再び立ちふさがるのです。じつはカツラウは敵(ゴッサマー)のエースパイロットで、ある理由によりその枠から出ることができず、フレディに友情を抱きつつも決着を付けるべく一騎打ちを挑むのです。燃える…燃えるよ!
 詳しい結末は本に譲るとして、私が非常に好きなのは「人間腹割って見ないとどんなやつかは分からない。それが異星人でも」ということ。人というのはともすれば先入観や他者の風評に左右されることが多々あります。もちろんそれも参考にはなるでしょうが、やはり自分の目で見て自分で考えて出た結末が、その人にとっても真実なのではないか? と思うのです。全く価値観が異なる者でも絶対歩み寄れる部分はあるでしょうし、すこしだけ相手に対して寛容になることって、結構大切なのでは? と考えるきっかけをくれたのがこの作品(というよりフレディとカツラウ)なのです。実際には非常に難しく、簡単にはできないことですがね。
 実は彼らの戦いはもう少しだけ続きます。ですが、個人的にはこの前後編の潔さが愛しく感じるのです。だから、私の『ブラスティー』はこれでおしまい! ただ、立体関係に関してはやり残した感がすごーくあります(あの悪い意味で凄過ぎたソフビキット…)。いつかかっちょいい可変ブラスティーを完成させる! と意気込んでから早16年。まだ頭しか…。
 ごめんよブラスティー…。
(月刊ホビージャパン2006年5月号掲載分)
最新の本棚へ戻る