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『ダンジョン・マガジン年鑑』について 『ダンジョンズ&ドラゴンズ』は今や新たな時代の中にいる。印刷出版物とデジタル・コンテンツが手を取り合って歩む時代だ。サポート誌やゲーム・サプリメントの数々に、DMとプレイヤーのそれぞれに役立つオンライン・ツール群が加わることで、ゲームにいっそうの魅力をもたらしているんだ。そんな今、僕たちがお届けするのはD&D Insider選集第二弾――そう、きみが手に取っているこの本だ(訳注:D&D Insiderはウィザーズ・オブ・ザ・コースト社が英語版でのみ提供しているオンライン・サービス)。 ──――クリス・ヤングス |
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文:ショーン・モリー
『氷塔の脅威』は、2レベル・キャラクター5人向けに設定された『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のアドベンチャーである。フォーゴトン・レルム世界を舞台とし、“灰色渓谷”のラウドウォーターの町の近くで冒険が展開する。また本作は、『フォーゴトン・レルム・キャンペーン・ガイド』第1章に掲載されたサンプル・アドベンチャー群からうまくつながるようにデザインされており、わけても『オーガ王の塚』は、ラウドウォーターとその周辺地域が案内されていることに加えて、PCたちをこのアドベンチャーに送りこむのに理想的な依頼主となりうるNPCたちが紹介されてもいることから、続けてプレイするのにうってつけだ。とはいえ、PCたちは、必ずしも以前にラウドウォーターを訪れていなければならないわけではない。
背景
30年ほど前に、あるドワーフのウォーロックが“灰色渓谷”にやって来た。男は名をドレイグデュロッホといい、ウォーロックの秘密結社の一員で、これまでにない“妖かしの契約”を成就させるための研究に取り組んでいた。ダイア森のどこかに、いまだ手つかずの絶大なエネルギー源――なり損ないの神の残骸――があるのだと男は信じた。“呪文荒廃”よりさかのぼること数千年、この地にはネザリル帝国の都市カースがあり、その都市の守護神格はカーサスという名のデミゴッドであった。カーサスは完全な神の位に昇りつめようと試みたがうまく行かず、その過程で命を落とし、彼の都市もほどなくして(古代ネザリル帝国の諸都市と同じく)廃墟となった。そのカーサスの石化した残骸が、ダイア森の中心付近で地下に眠っているらしいことをドレイグデュロッホは調査でつかみ、カーサスが体内に溜め込んだエネルギーを引き出すことで、新たな契約を成就させようと目論んだのだ。そしてダイア森の外縁から1マイルほど離れた場所に塔を築き、日夜研究に没頭した。
ドレイグデュロッホの直感は正しかった。ダイア森中心部の地下には途方もない魔法のエネルギーが凝縮されていたのだ。しかし、ダイア森に暮らすフェイの精霊たちは、かのデミゴッドの残骸がよからぬ者どもの手に渡ったならばいかに由々しい事態となりうるのかをはるか昔から知り抜いていた。彼らは自らを守護者に任じ、なり損ないの神が眠る土地が誰にも荒らされることのないように務めた。ドレイグデュロッホの研究が実を結びはじめ、カーサスの残骸の内部で谺する力を引き出して“闇の契約” を着々と現実のものにしはじめると、フェイたちは彼に詰めより、危険な力をもてあそぶのはやめろと警告した。だが、このドワーフ・ウォーロックは己の力量に自信満々であったため、警告を無視した。そこでフェイたちは、ドレイグデュロッホの軽挙妄動を懲らしめることにした。このドワーフ・ウォーロックをフェィワイルド内部に幽閉し、その塔は魔法の氷で封じ込めて、他の者たちへの見せしめとしたのだ。フェイたちは冬の精霊を封じ込めた強力なジェムストーン(宝石の原石)を設置し、この氷の結界を維持するための要石とした。
冒険の導入
当アドベンチャーはPCたちがラウドウォーターの町を活動拠点としているか、あるいは何らかの理由でラウドウォーターを訪れたという状況を想定している。冒険の導入案としてまず考えられるのは、深刻な問題に発展する前に異常気象の原因を究明して欲しいと依頼される、というものである。PCたちはすでにラウドウォーターの重要人物の幾人か、あるいは全員と面識があるかもしれないし、仮にPCたちがこの町を訪れるのが初めてだったとしても、早すぎる冬の到来を調査する人材としてはやはりもってこいの候補となるだろう。ラウドウォーターについてさらなる情報を得たければ、『フォーゴトン・レルム・キャンペーン・ガイド』第1章を参照のこと。
地元の農夫たちは、ラウドウォーターの指導者であるレイディ・ムーンファイアーとシルヴァナス寺院の長であるブラザー・グリフィンに、一体この地に何が起こっているのか突き止めてくれるよう陳情している。この種の出来事の常として悪の魔法の関与が疑われるため、ラウドウォーター在住のウィザードである“鉄面皮の”キュールヴァーも関わり合いになっている。これら3人のうちの誰か、あるいは全員が、問題の解決のためにPCたちに協力を求めたり、雇い上げたりする可能性がある。
レイディ・ムーンファイアー:ラウドウォーター住民の指導者であるハーフエルフのレイディ・ムーンファイアーは町を守る責任を負っている。彼女は、早すぎる冬の到来を心配している地元の農夫たちからの苦情を受け続けている。もし収穫がままならなければ、“灰色渓谷”全体がひもじい冬を過ごすことになるだろう。
以下を読み上げること:
「この異常な寒さの原因を突き止めてくれたら、私たちは貴方たちへの感謝の念を惜しまないわ」とレイディ・ムーンファイアーは言う。「今のこの状態が続いたなら、畑の作物は枯れ、ラウドウォーターの次の“死冬日”は、本当に不吉な名前通りの日となってしまうでしょうね。まずは、ダイア森の近くにそびえるドレイグデュロッホ塔から調査を始めてはどうかしら。あの塔の来歴を考えれば、この寒気と無関係だとは思えないもの。キュールヴァーならきっともっと詳しいことを話してくれるはずよ。正直なところ、30年は放置しすぎたわね――なんとしてでも、誰かがあの塔を探検しなくちゃならないのよ。これはね、間違いなく英雄にふさわしい冒険になるわよ!」
“鉄面皮の”キュールヴァー:ラウドウォーターに住むこのウィザードは中年のヒューマンであり、異邦人にはきまって疑いの目を向ける。だが一方、天候の変化が悪の魔法によって引き起こされていると推定されることから、キュールヴァーは何か手を打たねば、という重圧にさらされてもいる。彼は冒険に打って出るタイプではなく、離れた場所から問題の原因を探り出そうと試みているが、成果はほとんど上がっていない。とは言うものの、彼は強力な魔法のオーラが間違いなくダイア森の周辺から発されていることを突き止めた。レイディ・ムーンファイアーと同様、キュールヴァーもドレイグデュロッホ塔に興味を持っており、PCたちがウォーロックの秘術研究に関係する可能性のある物を発見したならすべて自分に持ってきて欲しいと依頼してくる。
「ミストラの失われた呪文にかけて、儂はかの塔がこたびの事象と何らかの関わりがあるに違いないと確信しておる。かのドワーフ、ドレイグデュロッホが何を研究していたのか、かの塔を魔法の氷に閉じ込める大惨事を引き起こしたものが何なのかを知る者はおらぬが、強力な魔法が関わる時にはいつでも、制御不能となって暴走する事態を招きうるものよ。ここ最近、ダイア森が注目を集めておる。かの塔がこたびの問題の原因でなかったとしても、おそらくそこにあるウォーロックの記録や所有物の中に手がかりを見つけることができるであろう。そろそろ誰かがこの地域に眠る太古の秘密のすべてを解き明かしてもよい頃だ」
ブラザー・グリフィン:この地にあるシルヴァナス寺院の長であるブラザー・グリフィンはウスガート人の血を引いており、がっしりした体格のヒューマンだ。冬それ自体は巡る季節の様相の1つであり決して悪いものではないが、その早すぎる到来は明らかに自然の摂理を逸脱したものなので、“森の父”にとっても重大な懸念事項となっている。四季の均整は保たれねばならない。ブラザー・グリフィンは必要とあらばPCたちをレイディ・ムーンファイアーでも“鉄面皮の”キュールヴァーでも、どちらにでも紹介することができる。
塔への旅
現在町に住んでいる者で塔へ行ったことのある者は誰もいないが、多くの者はそのおおよその位置をよく知っている。塔はダイア森の外縁から1マイルほど東に建っている 。ラウドウォーターから塔までの旅程は1日にも満たないので、PCたちが途中で野営をする必要はないだろう。だが状況を考えれば、PCたちは防寒対策を整えておきたいと思うかもしれない。ラウドウォーターには雑貨屋と薬屋が1軒ずつあり、基本的な装備はなんでもそろえることができる。PCたちはまた、自分たちの手でエンデュア・エレメンツの儀式を執り行なうか、レイディ・ムーンファイアーか“鉄面皮の”キュールヴァーに頼んでその儀式を執り行なってもらおうと考えるかもしれない。
吹雪
PCたちがラウドウォーターを出立した時点で、以下を読み上げること:
「晩夏の“灰色渓谷” は風光明媚だが、天候は明らかにどこか異常で、1日のうちで最も気温が上がる時間帯になっても大気は異様に冷たい。君たちの旅の最初の数時間は何事もなく過ぎてゆくが、森に足を踏み入れると、気温はどんどん下がっていく。木の葉はまだ紅葉さえしていないというのに、肌を刺す風は冬の気配を運んできている。
やがてダイア森の境界線を示す不気味に真っ白なアルビノの楢の木々が見えてくるまで、さらにしばらくの時間を要する。ドレイグデュロッホ塔はここから数マイル以内にあるはずだ。だが、位置確認のために君たちが地図に記されている目印を探そうとしても、何一つ見つけることができない。地平線は一面の銀世界となっている。冷たい霧は暗い森のまさに中心部から噴き出ているようであり、青みがかった灰色の空からは雪片がちらつき始める。君たちが歩いて来た道と同じく、前方の道も急速に視界が効かなくなっていく」
――本編へつづく