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いざ踏み出せ、アドベンチャーへの一歩を――『ダンジョン・マガジン年鑑』 9月4日(土)発売!

Scales of Warの手引きはこちらです

『ダンジョン・マガジン年鑑』について

 『ダンジョンズ&ドラゴンズ』は今や新たな時代の中にいる。印刷出版物とデジタル・コンテンツが手を取り合って歩む時代だ。サポート誌やゲーム・サプリメントの数々に、DMとプレイヤーのそれぞれに役立つオンライン・ツール群が加わることで、ゲームにいっそうの魅力をもたらしているんだ。そんな今、僕たちがお届けするのはD&D Insider選集第二弾――そう、きみが手に取っているこの本だ(訳注:D&D Insiderはウィザーズ・オブ・ザ・コースト社が英語版でのみ提供しているオンライン・サービス)。
 このサプリメントにはウィザーズ・オブ・ザ・コースト社発行のデジタル・マガジンで、DM向けのサポート記事を毎月提供する『Dungeon』誌に掲載されたアドベンチャーを取りそろえてある。ページをぱらぱら繰るうちに、合わせて5つのアドベンチャーが見つかるはずだ。そのうちの2つはD&D世界における独立したキャンペーン設定2つを舞台とするものだし、設定レベルについても、最高のものと最低のものの差は20レベル以上にもなる。『Dungeon』誌にはアドベンチャー以外の記事もあるのだけれど、僕たちは故あってこの本をアドベンチャーで埋めつくした。まず第一にあげられるのは、選択可能な記事の範囲に制約があったということだ。具体的に言うと、『Dungeon』誌で最初の特集記事が組まれるより前の号から候補を選ばなきゃならなかった(第4版のリリースから2009年9月まで)ってことなんだ。さらに重要なこととして、確かに『Dungeon』誌はDMを総合的にサポートする雑誌ではあるけれど、D&Dのアドベンチャーの発表の場として最高の晴れ舞台であり続けているってこともあげないわけにはいかない。そのことへの敬意を、僕たちはこの本で示したいと思ったんだ。
 最初の1年余りで発表された第4版のアドベンチャーに目を通すうちに、わずか160ページにそれらを収めなきゃならない事の大変さを思い知らされた。最初に選び出した候補は合計400ページ近くにもなってしまい、どうにかしてそれを絞り込む方法を考え出さなきゃならなかったんだ。僕としては、各“級”のアドベンチャーを1つずつは入れたかった。それに、現在までに発表されている2つのキャンペーン設定――つまりエベロンフォーゴトン・レルムのそれぞれについて、少なくとも1つのアドベンチャーは入れたいと思った。さらに、『Scales of War』シリーズのアドベンチャーからも、どれか1つは収録したかった。
 だけど、結果的に編集担当の上司からそっと告げられたのは、本の分量を倍にすることはできないという回答だった。僕たちはこの難題に頭をひねり、どうにか以下の作品を選び出した。

 『氷塔の脅威』ショーン・モリー作、『Dungeon』誌159号より:本書の冒頭を飾るアドベンチャーはフォーゴトン・レルムを舞台とし、2レベル・キャラクターたちを対象としたものだ。『フォーゴトン・レルム・キャンペーン・ガイド』で町のサンプルとして紹介されたラウドウォーターの近郊に設定されたこの作品には、低レベル・パーティによる小型ダンジョンの探索を忘れがたい体験にする要素が余さず詰め込まれている。そこには古典的なモンスターや、変異したゴブリンの一団、予想を裏切るボスキャラが登場するし、戦闘以外にも挑戦しがいのある困難がPCたちを待ち受けている。
 『魔女の冬』スティーヴン・ラドネイ・マクファーランド作、『Dungeon』誌161号より:ここで、アドベンチャーの対象レベルは本書所収中最低のものからいきなり最高の22レベルへと跳ね上がる。これは本書で唯一の神話級アドベンチャーだし、現在までに僕たちが世に出した神話級アドベンチャーというくくりで考えても、ほんのひと握りのうちの1つだ。でもね、神話級だからという理由だけで『魔女の冬』を選んだわけじゃないんだ。“冬の魔女”本人が醸し出す妖気と、ウェイン・レイノルズのイラストとが相まって、背筋が凍るような(あ、オヤジギャグのつもりじゃないんだぜ)プレイ感が味わえることが一番の理由なんだ。
 『岩皮王の玉座』ローガン・ボナー作、『Dungeon』誌166号より:『Scales of War』シリーズから本作に収められたこのアドベンチャーは、15レベルという伝説級の真っ只中にいるキャラクターたちを対象とするものだ。作者ローガンは冒険者たちをフェイワイルドに放り込み、フォモールの王の根城に渦巻く狂気と、狡猾この上ない強敵――ティアマトに仕える変幻自在なグリーン・ドラゴンのエグザルフ――に直面させる。緊迫した交渉と手に汗握る戦闘が同居するこのアドベンチャーは、『Scales of War』シリーズにおいてティアマトが最大の脅威であることがきわめて鮮烈に印象づけられた作品でもある。
 『嵐の塔』クリストファー・パーキンズ作、『Dungeon』誌166号より:『Dungeon』誌の選集に、この雑誌で最も多産なライターの作品を入れないなんて話があるか? この3レベル・アドベンチャーのトンデモなさは、パワープレイ四人衆とでもいうべきスコット・クルツ(PvP所属)、マイク・クラフリク、ジェリー・ホルキンス(共に『Penny Arcade』*所属)、ウィル・ウィートン(訳注:映画『スタンド・バイ・ミー』で、語り手役の少年を演じた俳優)が、そのハチャメチャぶりを遺憾なく発揮したプレイを元ネタにしている点にも見ることができる。マイク・クラフリクが描いてくれたとびきりのイラストもまた、このアドベンチャーに色を添えているよ。(訳注:*はビデオ・ゲームやその周辺の文化を紹介する、アメリカの老舗ウェブ・コミック。ネーミングはおそらくビートルズの名曲“ペニー・レイン”と“文無しゲーマーズ”をかけてのもの)
 『禁断の炉の中心』ルーク・ジョンソン作、『Dungeon』誌167号より:7レベル・キャラクター向けのエベロンのアドベンチャーが、『ダンジョン・マガジン年鑑』の最後を飾る。ウォーフォージドのドラゴン――それだけ言えば充分だろう。ルークから最初にそのアイデアを打ち明けられ、デザイン・マネージャーのジェームズ・ワイアットにお伺いを立てた時のことは忘れもしないよ。「それって行けると思いますか?」僕は訊ねた。「ウォーフォージドのドラゴンだとぉ?」目がきらきらと輝いていたよ。そのアイデアをジェームズがどう受けとめたのかは、実際に読んでもらえばわかるってものさ。この本の中でもとびきり独創的な悪役が、行く手に立ちはだかる冒険者たちを身も世もない絶望に投げ込もうと待ち構えているんだ。普段はエベロンでプレイしていない人たちにとっても、このアドベンチャーはとびきりに面白いこと請け合いだよ。
 残念ながら割愛せざるを得なかったいくつかのアドベンチャーについても、敬意を表してここに名前を挙げておきたい。『Havenof the Bitter Glass』(http://www.wizards.com/dnd/Article.aspx?x=dnd/duadp/2009March)と、『Rescue at Rivenroar』(http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/duadp/20080711)の2作はどちらも、『Dungeon』誌の最初の1年間に誌面を賑わした『Scales of War』シリーズの傑作だ。そして『Last Breath of Ashenport』(http://www.wizards.com/DnD/Article.aspx?x=dnd/duad/20080729)は、ラヴクラフトのホラー風味をちょっぴり加えることで、ゲームがとびきり面白くなることのまたとない例だ。
 『ダンジョンズ&ドラゴンズ』を毎日の仕事にできることは特権だと思うし、毎月そうした素晴らしいアドベンチャーの数々によって想像力の火をかき立てられ続けるってのもまた役得だって我ながら思う。僕がこれらの作品から受けたひらめきを君たちにもこのサプリメントから感じとってもらえたなら、こんなに嬉しいことはない。そして、ぜひD&D Insiderを覗いてみてほしい。そこでは数々の記事やアドベンチャーが手ぐすねを引いて、君たちのゲームをもっともっと面白くしようと待ち構えているんだからね。

 ──――クリス・ヤングス


氷塔の脅威

2レベル・キャラクター用アドベンチャー

文:ショーン・モリー


 『氷塔の脅威』は、2レベル・キャラクター5人向けに設定された『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のアドベンチャーである。フォーゴトン・レルム世界を舞台とし、“灰色渓谷”のラウドウォーターの町の近くで冒険が展開する。また本作は、『フォーゴトン・レルム・キャンペーン・ガイド』第1章に掲載されたサンプル・アドベンチャー群からうまくつながるようにデザインされており、わけても『オーガ王の塚』は、ラウドウォーターとその周辺地域が案内されていることに加えて、PCたちをこのアドベンチャーに送りこむのに理想的な依頼主となりうるNPCたちが紹介されてもいることから、続けてプレイするのにうってつけだ。とはいえ、PCたちは、必ずしも以前にラウドウォーターを訪れていなければならないわけではない。


背景

 30年ほど前に、あるドワーフのウォーロックが“灰色渓谷”にやって来た。男は名をドレイグデュロッホといい、ウォーロックの秘密結社の一員で、これまでにない“妖かしの契約”を成就させるための研究に取り組んでいた。ダイア森のどこかに、いまだ手つかずの絶大なエネルギー源――なり損ないの神の残骸――があるのだと男は信じた。“呪文荒廃”よりさかのぼること数千年、この地にはネザリル帝国の都市カースがあり、その都市の守護神格はカーサスという名のデミゴッドであった。カーサスは完全な神の位に昇りつめようと試みたがうまく行かず、その過程で命を落とし、彼の都市もほどなくして(古代ネザリル帝国の諸都市と同じく)廃墟となった。そのカーサスの石化した残骸が、ダイア森の中心付近で地下に眠っているらしいことをドレイグデュロッホは調査でつかみ、カーサスが体内に溜め込んだエネルギーを引き出すことで、新たな契約を成就させようと目論んだのだ。そしてダイア森の外縁から1マイルほど離れた場所に塔を築き、日夜研究に没頭した。
 ドレイグデュロッホの直感は正しかった。ダイア森中心部の地下には途方もない魔法のエネルギーが凝縮されていたのだ。しかし、ダイア森に暮らすフェイの精霊たちは、かのデミゴッドの残骸がよからぬ者どもの手に渡ったならばいかに由々しい事態となりうるのかをはるか昔から知り抜いていた。彼らは自らを守護者に任じ、なり損ないの神が眠る土地が誰にも荒らされることのないように務めた。ドレイグデュロッホの研究が実を結びはじめ、カーサスの残骸の内部で谺する力を引き出して“闇の契約” を着々と現実のものにしはじめると、フェイたちは彼に詰めより、危険な力をもてあそぶのはやめろと警告した。だが、このドワーフ・ウォーロックは己の力量に自信満々であったため、警告を無視した。そこでフェイたちは、ドレイグデュロッホの軽挙妄動を懲らしめることにした。このドワーフ・ウォーロックをフェィワイルド内部に幽閉し、その塔は魔法の氷で封じ込めて、他の者たちへの見せしめとしたのだ。フェイたちは冬の精霊を封じ込めた強力なジェムストーン(宝石の原石)を設置し、この氷の結界を維持するための要石とした。


冒険の導入

 当アドベンチャーはPCたちがラウドウォーターの町を活動拠点としているか、あるいは何らかの理由でラウドウォーターを訪れたという状況を想定している。冒険の導入案としてまず考えられるのは、深刻な問題に発展する前に異常気象の原因を究明して欲しいと依頼される、というものである。PCたちはすでにラウドウォーターの重要人物の幾人か、あるいは全員と面識があるかもしれないし、仮にPCたちがこの町を訪れるのが初めてだったとしても、早すぎる冬の到来を調査する人材としてはやはりもってこいの候補となるだろう。ラウドウォーターについてさらなる情報を得たければ、『フォーゴトン・レルム・キャンペーン・ガイド』第1章を参照のこと。
 地元の農夫たちは、ラウドウォーターの指導者であるレイディ・ムーンファイアーとシルヴァナス寺院の長であるブラザー・グリフィンに、一体この地に何が起こっているのか突き止めてくれるよう陳情している。この種の出来事の常として悪の魔法の関与が疑われるため、ラウドウォーター在住のウィザードである“鉄面皮の”キュールヴァーも関わり合いになっている。これら3人のうちの誰か、あるいは全員が、問題の解決のためにPCたちに協力を求めたり、雇い上げたりする可能性がある。


 レイディ・ムーンファイアー:ラウドウォーター住民の指導者であるハーフエルフのレイディ・ムーンファイアーは町を守る責任を負っている。彼女は、早すぎる冬の到来を心配している地元の農夫たちからの苦情を受け続けている。もし収穫がままならなければ、“灰色渓谷”全体がひもじい冬を過ごすことになるだろう。

 以下を読み上げること

 「この異常な寒さの原因を突き止めてくれたら、私たちは貴方たちへの感謝の念を惜しまないわ」とレイディ・ムーンファイアーは言う。「今のこの状態が続いたなら、畑の作物は枯れ、ラウドウォーターの次の“死冬日”は、本当に不吉な名前通りの日となってしまうでしょうね。まずは、ダイア森の近くにそびえるドレイグデュロッホ塔から調査を始めてはどうかしら。あの塔の来歴を考えれば、この寒気と無関係だとは思えないもの。キュールヴァーならきっともっと詳しいことを話してくれるはずよ。正直なところ、30年は放置しすぎたわね――なんとしてでも、誰かがあの塔を探検しなくちゃならないのよ。これはね、間違いなく英雄にふさわしい冒険になるわよ!


 “鉄面皮の”キュールヴァー:ラウドウォーターに住むこのウィザードは中年のヒューマンであり、異邦人にはきまって疑いの目を向ける。だが一方、天候の変化が悪の魔法によって引き起こされていると推定されることから、キュールヴァーは何か手を打たねば、という重圧にさらされてもいる。彼は冒険に打って出るタイプではなく、離れた場所から問題の原因を探り出そうと試みているが、成果はほとんど上がっていない。とは言うものの、彼は強力な魔法のオーラが間違いなくダイア森の周辺から発されていることを突き止めた。レイディ・ムーンファイアーと同様、キュールヴァーもドレイグデュロッホ塔に興味を持っており、PCたちがウォーロックの秘術研究に関係する可能性のある物を発見したならすべて自分に持ってきて欲しいと依頼してくる。
 「ミストラの失われた呪文にかけて、儂はかの塔がこたびの事象と何らかの関わりがあるに違いないと確信しておる。かのドワーフ、ドレイグデュロッホが何を研究していたのか、かの塔を魔法の氷に閉じ込める大惨事を引き起こしたものが何なのかを知る者はおらぬが、強力な魔法が関わる時にはいつでも、制御不能となって暴走する事態を招きうるものよ。ここ最近、ダイア森が注目を集めておる。かの塔がこたびの問題の原因でなかったとしても、おそらくそこにあるウォーロックの記録や所有物の中に手がかりを見つけることができるであろう。そろそろ誰かがこの地域に眠る太古の秘密のすべてを解き明かしてもよい頃だ

 ブラザー・グリフィン:この地にあるシルヴァナス寺院の長であるブラザー・グリフィンはウスガート人の血を引いており、がっしりした体格のヒューマンだ。冬それ自体は巡る季節の様相の1つであり決して悪いものではないが、その早すぎる到来は明らかに自然の摂理を逸脱したものなので、“森の父”にとっても重大な懸念事項となっている。四季の均整は保たれねばならない。ブラザー・グリフィンは必要とあらばPCたちをレイディ・ムーンファイアーでも“鉄面皮の”キュールヴァーでも、どちらにでも紹介することができる。


塔への旅

 現在町に住んでいる者で塔へ行ったことのある者は誰もいないが、多くの者はそのおおよその位置をよく知っている。塔はダイア森の外縁から1マイルほど東に建っている 。ラウドウォーターから塔までの旅程は1日にも満たないので、PCたちが途中で野営をする必要はないだろう。だが状況を考えれば、PCたちは防寒対策を整えておきたいと思うかもしれない。ラウドウォーターには雑貨屋と薬屋が1軒ずつあり、基本的な装備はなんでもそろえることができる。PCたちはまた、自分たちの手でエンデュア・エレメンツの儀式を執り行なうか、レイディ・ムーンファイアーか“鉄面皮の”キュールヴァーに頼んでその儀式を執り行なってもらおうと考えるかもしれない。


吹雪

 PCたちがラウドウォーターを出立した時点で、以下を読み上げること
 「晩夏の“灰色渓谷” は風光明媚だが、天候は明らかにどこか異常で、1日のうちで最も気温が上がる時間帯になっても大気は異様に冷たい。君たちの旅の最初の数時間は何事もなく過ぎてゆくが、森に足を踏み入れると、気温はどんどん下がっていく。木の葉はまだ紅葉さえしていないというのに、肌を刺す風は冬の気配を運んできている。
 やがてダイア森の境界線を示す不気味に真っ白なアルビノの楢の木々が見えてくるまで、さらにしばらくの時間を要する。ドレイグデュロッホ塔はここから数マイル以内にあるはずだ。だが、位置確認のために君たちが地図に記されている目印を探そうとしても、何一つ見つけることができない。地平線は一面の銀世界となっている。冷たい霧は暗い森のまさに中心部から噴き出ているようであり、青みがかった灰色の空からは雪片がちらつき始める。君たちが歩いて来た道と同じく、前方の道も急速に視界が効かなくなっていく


 ――本編へつづく