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序文 原初契約
デヴィルそのものや彼らのやり方を理解したいなら、彼らが自身について話す物語に耳を傾けるのが最も良い。そのような物語のなかで最も有名なものは神話として物質界の全世界に広まっており、あらゆる種類の定命の存在が知っている。だが伝説は皆そうであるように、その神話も矛盾に満ちている。たとえば、“原初契約”の物語はこの多元宇宙の創世神話として受け入れられている。しかしながら別の物語は、この宇宙の創造者の堕落した姿としてアスモデウスを位置付けている。
独自の“原初契約”伝説を持つ文化は無数にある。その伝説に登場する神々の名前は文化によって異なるが、デヴィルの名前は常に同じだ。忌まわしい悪の哲学者であるピロゲステスはこの事実から霊感を受けて、あの有名な格言を著したのかもしれない。すなわち「神々は無数にあるが、アスモデウスは唯一無二である」
有名な神話は皆そうであるように、次の物語も真実である――それが実際に起きたのかどうかはさておいて。
最初に――そしてそれ以前に――あったのは混沌だけだった。混沌からデーモンが生まれた。生きている混沌の顕現だ。時はまだ生まれていなかったため、デーモンは無秩序の渦の中で計測できない期間に渡り、絶え間なくお互い同士で戦いあった。
この生の混沌状態はこの宇宙にとって耐え難いものだったため、それと戦う勢力が台頭した。秩序の勢力である。この抽象的な秩序の原理に従い、デーモンと戦うためにたくさんの存在が団結した。
これらの新しい秩序の神々は、純粋な安定性によって作られた光り輝く鎧にその身を包み、理想的な概念によって作られた武器を帯びていた。そうして彼らはデーモンと戦った。無限の永劫に渡った戦いの後、秩序の神々は進捗状況を確認する必要性を感じた。彼らは数を生み出した。殺害した敵を数えるためだ。そして時も生み出した。勝利まであとどれくらいかかるかを計るために。
しかしながら、デーモンは無限に生み出されているのではないかと秩序の神々は徐々に疑い出した。戦いに疲れた彼らは別の仕事を始めたいと考えた。たとえば世界や知的生命体の創造だ。そのため彼らは翼を持つ美しい戦士を生み出した。それらの戦士は、デーモンとの終わりなき戦争とこれから生み出そうとしている諸世界の両方で彼らに仕え、彼らの信仰魔法を使用した。栄光に満ちたこれらの多様な戦士はエンジェルと呼ばれた。
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最も勇敢で、最も頑健で、最も獰猛で、最も美しいエンジェルはアスモデウスだった。彼は他のどのエンジェルよりもたくさんのデーモンを殺害した。それどころか、他のどの神よりも。しかしながら永劫の時が過ぎゆくにつれ、アスモデウスと彼の壮麗で恐るべき部隊のメンバーは、その敵が持つ特徴の一部を身につけ始めた。より効果的に戦うためだっ
た。徐々に、彼らの美は醜となり、神々やその他のエンジェルは彼らを恐れ始めた。最終的に天上の諸王国の住民は、アスモデウスと復讐に燃える彼の最も恐ろしいエンジェルを追放するよう、大いなる神々に請願した。そのためアスモデウスは武勇の神であるハイローニアスによって裁判にかけられた。
最闇のエンジェルであるアスモデウスは直ちに公訴を受けて立ち、自身もその作成に協力した秩序の大法典を読み上げた。「秩序の最優先の使命は混沌の破壊なり」と、彼は主張した。「我は他の誰よりもこの使命を良く成し遂げた」
「汝は戦争をなし、それを良くなした」と、ハイローニアスは同意した。
「しかしながら汝とその部隊はその戦争によって毒されてしまった。どうかどこか別の場所へ行ってはくれまいか? さもなくば我々も汚染されてしまう故」
アスモデウスは微笑み、何千もの戦場の煙が彼の唇から立ち上った。
「戦いの王である」と、彼は指摘した。「あなたは、戦争とは汚い仕事であることを他の誰よりも良く知っているべきである。我々は、あなたがたが金色であり続けられるように、自らを黒くした。我々は秩序を維持しており、それを破壊してはおらぬ。従って、あなたは我々を追放すること叶わぬ」
神々が集まり、アスモデウスの発言について協議した。そしてアスモデウスの主張を否定するような記述が大法典にまったくないのを知ってびっくり仰天した。闇のエンジェル・アスモデウスは神々よりも秩序のことを良く知っていた。そして大法典の各条項をナイフのように使用することができた。
時が経つにつれ、アスモデウスと彼の部隊の外見はいよいよ恐るべきものとなっていった。口からは牙が飛び出し、舌の先は二股に分かれ、その肉体を火がマントのように包んだ。神々は彼らから逃れるために新しい城塞を建設したが、アスモデウスとその従者はそれらの防御を突き破った。彼らは独自の法に基づいて神々を訴え、秩序の体現者に相応しいすべての特権を要求した。神々は苦悩したが、彼らを阻む合法的な手段は存在しなかった。
そのため神々は自分たちの仕事に戻った。すなわち定命の存在と、それらのクリーチャーが住む緑の諸世界の創造である。しかしながらデーモンがそれらの世界を侵略すると、それを阻止するためにアスモデウスの部隊が召集された。外方諸次元界の戦場だろうと物質界の新しい諸世界だろうと、貪欲なタナーリの軍勢をやっつけるのは容易な仕事ではなかったが、アスモデウスと彼の闇のエンジェルは敵を追い返すのにおおむね成功した。神々とエンジェルは協力しあい、デーモンを近づけないために物質界に障壁を作った。彼らは城壁を作り、山脈を作り、諸世界の一部を氷の荒野で覆い、デーモンが使用した出入り口を広大な海洋の下に沈めた。こうして新たに生み出された諸世界は、アスモデウスやその部隊と同様に、傷だらけの醜い存在となった。すべては秩序の大義のために。
やがて秩序の神々は愕然とした。彼らが生み出した定命の存在が――彼らの誇りであり喜びであったわけだが――それらの障壁を直ちに破壊し始めたのだ。彼らは城壁を乗り越え、山に登り、氷河を横断し、デーモンを呼び戻した。物質界に帰還したデーモンは暴れ回り、地上の楽園を次から次へと破壊して回った。
神々は怒ったが、同時に混乱した。「なぜ私の可愛いハーフリングはこんなことをするの?」と、ヤンダーラが叫んだ。ハーフリングを生み出した女神である。
「儂は山を生み出した。そして儂の賢いドワーフを山の守護者にしたのだ!」と、モラディンが咆哮した。「なぜ奴らは山の下にトンネルを掘っている? そこにはデーモンの墓地があるというのに」
神々は嘆き悲しんだ。やがてアスモデウスが答えを持ってきた。「あなたがたが生み出した定命の存在がこれらの行為をなすのは、あなたがたが彼らに独自の精神を与えたからに他ならない」
「もちろんだとも!」と、神々は言った。「自由意志がなければ、法を遵守するかどうかの選択など無意味だ」
「いかにも」と、アスモデウスが答えた。きっちりと刈り込まれた彼の赤い鬚の中からごそごそと這い出してきた小さい虫を握り潰しながら。「これらの定命の存在は好奇心の強いクリーチャーだ。そしてデーモンは彼らに自由を約束した。間もなく彼らは学ぶだろう。彼らの目の前にぶら下がっている自由とは、完全な無秩序であることを。そしてデーモ
ンの国で彼らが得るであろう自由とは、滅ぼされる自由のみであることを。しかしながらその頃には時すでに遅し。あなたがたはさらなる世界を創造するかもしれないし、そこに住まう定命の存在をさらに生み出すかもしれないが、そうしたところでまったく同じ愚行が永遠に繰り返されるだけであろう。間違いない」
闇のエンジェル・アスモデウスの言葉が真実であることを認識した神々は意気消沈し、自身の衣服をかきむしって絶望に嘆き悲しんだ。
「あなたがたには思いもつかないであろう解決策を我は知っている」と、アスモデウスは言った。「あなたがたの大切な定命の存在が自由意志を保持するような方法を。かくも情け深いあなたがたが彼らに与えたもの故。だが問題が一つ」と、彼は続けた。「あなたがたの法は自発的な服従を要求している。あなたがたは定命の存在に断固として混沌を退けるよう命じている。だが彼らがあなたがたに従わなかったら、何が起きる?」
神々は答えることができなかった。「我々は彼らの創造主だ」と、ヤンダーラがうめいた。「彼らは我々に従わねばならぬ」
「いかにも彼らは従わねばならぬ」と、アスモデウスは答えた。公正なヤンダーラに向かって慇懃にお辞儀しながら。「だが彼らは従わぬ。なぜなら懲罰を伴わぬ法など何の意味も持たぬ故」
「懲罰?」 神々はざわめいた。「汝は何を言っておるのだ?」
アスモデウスはその鞘を払った。この時点での懲罰は巨大な剣の形をしていたが、それ以降はさまざまな形態を取るようになった。「我はあなたがたのために秩序の最終武器としてこのアイテムを作り出した。法が破られたら、他者に対する見せしめとして悪人は懲罰を受けねばならぬ。従って定命の存在は、正義の行為による楽園と邪悪な行為による責め苦のいずれかを選択することができる。僅かな者が懲罰を受けることにより、大部分の者は不法行為がもたらす結果を知ることができる」
この発言によって神々はざわめいたが、これまでもそうだったように、秩序の擁護者アスモデウスの論理に瑕疵はなかった。悪が懲罰を受けないなら、定命の存在が徳を選択するなどと一体全体なぜ期待できる?
ついに、1柱の小神が前に進み出て言った。「確かに、応報はすべての法の基礎だ」 この発言によって彼はその場で上級神になった。現在聖カスバートと呼ばれている神である。
その日以降、秩序と混沌はこの宇宙における唯一の原理ではないと神々は考え始めるようになった。善も悪もこの宇宙に最初から存在する勢力であるため、それによって神々は2つに分かれた。ヘカテやセトといったような神々はアスモデウスの堕したエンジェルに庇護を与えた。ハイローニアスなどの神々は彼らからさらに距離をおいた。
こうして神々は新しい法を布告し、定命の存在の土地全域にクレリックを送り込み、罪に対する懲罰は責め苦であると宣言させた。神々はこの作戦に満足した。誰もが服従するであろう、従って実際に懲罰を受ける者など1人もいないであろうと彼らは本気で思っていた。
しかしながら死亡した定命の存在の魂のなかには、罪の悪臭を振りまきながら天上の諸次元界に到達する者もいた。アスモデウスは、ディスパテルやメフィストフェレスといったような闇の部下の支援を受けて、法に基づいた懲罰を開始した。彼らは罪人を鞭打ち、火焙りにし、磔にした。
罪人の絶叫が天界全域にこだまし、神々の牧歌的な庭園の花々は血を滴らせた。秩序の神々は耳を塞ごうと試みたが、この恐怖に耐えることはできなかった。そのため彼らはアスモデウスを鎖に繋ぎ、彼らに対する重い罪で再び告発した。
「我は以前に言った通りのことをしたまでだ。あなたがたが作った法に基づいて」と、アスモデウスは言った。再び、神々は彼が正しいと認めざるをえなかった。
「だが一つ提案がある」と、無慈悲な戦士アスモデウスは続けた。「あなたがたは法を護持したいと考えているが、違反者の結末を見たいとは思っていない。そこであなたがたの繊細な感情を守るために、我の従者と我はどこか別の場所で仕事をしよう。あなたがたのために完璧な地獄を作ろう。地獄はあなたがたの役に立つであろうが、それを見る必要は絶対にない。地獄は……そこに作ろう」 そして彼は何もない土地を指差した。現在そこはバートルと呼ばれている。
「よろしい、よろしい!」と、すべての神々が言った。「地獄はそこへ移せ! 今すぐだ!」
「御意」と、アスモデウスは言った。彼が手を広げると、強力なルビー・ロッドがその中に出現した。「だがその前に契約を結ばねばならぬ」
「契約?」と、モラディンが疑わしげに尋ねた。
「いかにも」と、アスモデウスが言った。彼が手を一振りすると文書が出現した。「あなたがたはあえて足を踏み入れないであろう場所であなたがたのために働く我々があなたがたの命令を実行し続けることを保証することによってあなたがたに利益をもたらす契約だ。この契約は地獄に堕ちる魂が背負う運命を規定する。それと引き替えに、我々はそれらの魂から魔法を引き出すことができる。そうすれば我々は呪文にエネルギーを与え、力を維持することができる」
「そいつはどうかね」と、頑固なモラディンが言った。
「あなたの懸念は良くわかる、“ドワーフの父”よ」と、アスモデウスは最も安心させる口調で言った。「だが我々があなたがたから引き離されれば、我々はあなたがたから力を引き出すことができなくなる。それとも我々を神にしてくれるのかね? そうすればあなたがたから独立して活動できるわけだが」
「もちろん否だ!」 モラディンはその考えに度を失って怒り狂った。
「よろしい、では代わりに、このちょっとした契約を結ぼうじゃないか」と、彼は言って微笑んだ。こうして秩序の神々は、邪悪な魂を転送する規則と地獄の境界線を規定した契約に署名した。現在、定命の存在はこの文書を“原初契約”と呼んでいる。
契約に署名したアスモデウス、メフィストフェレス、ディスパテルはバートルへ向かった。当時のバートルは何もない荒涼とした平原だった。その他の闇のエンジェルの大軍も彼らに同行した。彼らは自身をエリニュスと呼んだ。
「一体全体我らをどこに連れてきたんだ?」 メフィストフェレスがうめいた。
「ここには何もない!」 ディスパテルが文句を言った。
「ちょっと待て」と、アスモデウスが言った。そして彼は計画を説明した。
高潔な秩序の神々は新たに浄化された天上の諸王国に満足した。残酷で堕落したエンジェルから初めて解放されたのだ。だがさまざまな天界に転送されてくる魂の数の異常なまでの減少に気付くのに、定命の存在の基準でいってもそう長い年月はかからなかった。聖職者に尋ねたところ、デヴィルは定命の存在を堕落させるとともに、彼らを悪に変えることによってその破滅を確実なものとしていることがわかった。
神々は代表団を編成し、直ちにバートルへ向けて出発した。驚いたことに、かつて何もない平原だった場所は恐るべき恐怖と責め苦の9階層に変貌していた。その領域内では無数の魂が苦痛にのたうち回っていた。それらの魂は、最初は精神を持たずに這い回るモンスターになり、最後には強力なデヴィルの軍隊になった。
「ここで何をしている?」 ハイローニアスが尋問した。
「魂を刈り取る力を我らに与えたのはあなたがたではないか」と、アスモデウスが答えた。「地獄を作るために、そして我々に与えられた仕事を行うのに必要な力を手に入れるために、収穫を増やす方法を見つけねばならなかったのは至極当然と言えよう」
戦の神ハイローニアスはぱちぱちと音を立てる稲妻を纏ったロングソードを引き抜いた。「汝の仕事は罪人に懲罰を与えることだ。罪人を増やすことではない!」と、彼は叫んだ。
アスモデウスは微笑んだ。彼の鋭い歯と歯の間から毒蛾が飛び立った。「その文書を良く読め」と、彼は答えた。
| 魔物の書 プレビュー(発売日まで定期的に更新します) |
※プレビューの文章はいずれも製作段階のもので、製品版とは一部異なる可能性がございます。予めご了承下さい。
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| 流血戦争 |
第1階層 アヴェルヌス |
第2階層 ディス |
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| 第3階層 ミナウロス |
第4階層 プレゲトス |
第5階層 ステュギア |
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| 第6階層 マーレボルジェ |
第7階層 マラドミニ |
第8階層 カニア |
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| ヘルファイアー・ウォーロック |
ヘルブレイカー |
ヘルリーヴァー |
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| アイペロボス・スウォーム |
ドガイ(アサシン・デヴィル) |
アビシャイ |
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| ヌッペリボー |
パエリリオン |
ヘルファイアー・エンジン |
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| ベル、第1階層の主 |
ディスパテル、第2階層の主 |
マモン、第3階層の主 |
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| ベリアルとフィアーナ、第4階層の主 |
レヴィストゥス、第5階層の主 |
グラシア、第6階層の主 |
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| バールゼブル、第7階層の主 |
メフィストフェレス、第8階層の主 |
アスモデウス、第9階層の主 |
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