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トーチ・ポートWEBリプレイ 第2回

文:柳田真坂樹(骰拾陸) 絵:チョモラン


のアイコンにマウスポインタを当てていただくと用語の説明がご覧いただけます。
※第1話はこちらです。


ファブスター卿のあずまや


DM:2人が門を抜けると、のどかに工事の音が聞こえてくる。手入れのされた庭園に通されると、そこには石造りのあずまやがあり、恰幅の良い紳士と濃紺のローブをまとった娘がなにやら話をしているね。彼らが手にした茶器は西南の島産の磁器で、なかなかの物だよ。
サーリアとイーヴァルは、そのころトーチ・ポートで道を探しているということでよろしく。
ガーリン:「卿にペイロアの陽光の祝福を。ヒルガ聖堂よりまかりこしましたガーリンと申します」。
イスカ:とりあえずは従者のように控えていよう。どんな感じで迎えられている? あと隣にいる学者の娘に睨まれているようだが、何か身に覚えがあったりは?
DM:ファブスター卿には丁重に迎えられるね。学者娘のアレは素だ(〈真意看破〉判定を行なった)。すでに家令から話を聞いているファブスター卿は、にこやかに挨拶を返し、まずはあたりさわりのない世間話などをはじめるよ。
ガーリン:慣れないなりにがんばって社交的な会話を試みるぞ。“石工の勘”でわかって何か褒められる物はないか?
DM:石工の勘でわかるのは、石造物の不審な点なんだけど。
イスカ:うむ。実はなこのあずまやが吊り天井なのだ。
ガーリン:『いやあ、これは見事な吊り天井、ドワーフの作にございますな。これまでの何人の血を吸ったものやら』(無駄に朗らかに)
DM:黙れ、反応セーヴ振らすぞ(笑) まぁ、実際にあずまやは造りの良い石組みだ。とはいえ、これは石工の勘というよりは石や金属の〈鑑定〉へのボーナスでわかる内容かな。
ガーリン:「みごとな造りにございます。施主の目が確かでないとこうは参りませぬ」
ソフィーア:〈知識:建築術および工学〉の判定に成功しましたからロールプレイします。「これは、後期銀コンパス派の様式で……」と無愛想に話します。
DM:二人の言葉を聴くと、わが意を得たといった様子でファブスター卿はうなずく。
イスカ:機を逃さず本題に。寄進の件を持ち出すぞ。
DM:了解。「なるほど、寄進の件は以前よりお約束したこと、喜んで引き受けましょう。ただ、代わりといってはなんですがお願いしたいことがあります。ちょうど、そのためにソフィーア嬢にも来て頂いたのですが……」
イスカ:おいでなすった。
ファブスター(DM):ごらんのように私は今、屋敷の内装を変えております。つてを頼ってさまざまに調度品や骨董を集めたのですが、1つどうしても屋敷の飾り扉に納得のいったものがありません。が、探すうちにとある有名な職人が飾り扉を手がけていると知りました。その職人の名は“スフィアパイク”と言います。
ソフィーア:〈知識〉判定を行ないました。“建築術および工学”と“地域”の2分野です。心当たりは?
DM:名前は知っている。木工の名工で家具などで有名だ。飾り扉については聞いていない。
ソフィーア:「スフィアパイクが飾り扉を手がけていたとは初耳です」
ファブスター(DM):ええ、私もでした。が、それは事実であり、また作品もすばらしい物だったのですよ、ソフィーアさん。発注したのは私の祖父で、郊外の邸宅に据えつけました。数は8面。南洋の銘木で、それぞれに贅をこらした細工がしてあったといいます。ですが、代を経てわが一族はトーチ・ポートの市壁の中に住むようになり、その館は放って置かれました。当時の当主にはその価値がわからなかったのでしょうな。
イスカ:とすると、我々に回収を?
ファブスター(DM):(うなずいて)現在、邸宅の周りには人家もなく荒れております。噂によれば獣や野盗が巣くってしまっているとか。お願いしたいのは扉の回収です。幸い、ガーリン殿はドワーフとして建築に素養がおありのよう。ソフィーア殿は建築様式に明るい。美術品の回収を任せるに足る方とお見受けしました。
イスカ:ガーリン殿? いかがで。
ガーリン:寄進をいただけるのであれば、受けさせていただこう。
ソフィーア:私達への報酬は?
ファブスター(DM):飾り扉を1枚につき300gp、傷がついているものについては1枚50gpという歩合でいかがかな? 8枚すべて回収できたのであればさらに礼金を支払う用意があります。
ガーリン:良いご提案ですな。それなら、腕利きを揃えることもできましょう。

 額としては十分(なにせ無傷で揃えたならば2900gpになる!)なので聖堂の任務と直接関係ないソフィーアやイスカも乗り気になった。イスカはてきぱきと案内・運搬のてはずを整え、ファブスター家の使用人と荷馬車を借り出す。ソフィーアは飾り扉について必要なことを聞き出してゆく。

ソフィーア:飾り扉はそれぞれ飾りに隠して番号が記されているそうです。重量150ポンド(約70kg)というのは結構重いですね。
イスカ:取り外し、運び出しにやはりもう少し頭数が欲しいな。それに、獣や野盗というのも気になる。“腕と度胸”が必要だ。
ガーリン:ふむ、なれば先ほどのあの2人が良いだろう。
DM:シナリオ進行への協力感謝!

このシーンの裏側


 集まるシーンは、こちらで展開を用意していなかった割にはうまくいった。イスカの旗ざおや酒場の乱闘とかはご覧の通りプレイヤーの意見を取り入れ、協力をお願いした結果だ。DMが準備したりするよりもかえって記憶に残るシーンになったかも。
 メンバーが一緒になるにあたって、実のところソフィーアとガーリン以外のキャラクターには、積極的にこの依頼を受ける理由がない。けどそのあたりは、ゲームに参加するプレイヤーとしての視点に立ってもらい、あまりしっかりとプレイしてはいない。どちらにしろ冒険に出なければ始まらない話だというのは(プレイヤーも)わかっているからだろう。
 逆に、それぞれのキャラクターに思惑があったり、当初の関係を利用してDMが遭遇を考えていたりするなら、出会いから仲間になるまでを、ちゃんとゲームとして行なってもいい。その当たりのメリハリは参加者全員で作り出す、ゲーム全体のふんいきによる。

ファブスター家邸宅跡地にて、または踏み込むまでの思惑百態



イーヴァル: 結局おれは異教の聖堂におもむき、そこであのドワーフの話を受けることにした。金貨なしにはふるさとの外で生きてゆけないということを、旅立ってすぐ、おれは知らされていたからだ。ありがたいことに、街でも荒野でも腕っ節と棍棒は糧を得るのに役に立った。
 街道ですれ違った行商人が言うには、二本足で歩く大きな狼に率いられた山賊が出るという話だったが、おれ達が襲われることはなかった。貴族の館の跡に直接向かうか、それともやや離れた近くの村――サクストン村といった――に向かうかで意見が分かれたが、結局、館の跡におれ達は急いだ。

 館の跡をとどめるのは土台の石組みだけだった。屋根は落ち、しっくいの壁も崩れ落ちている。門のあったと思しき所には半ば朽ちた立て札がある。サーリアが小声で読み上げた。
『ファブスター家の私有地、許可なく立ち入りを禁ず』
 使ってもいない土地の立ち入りを禁じるとはなんとも奇妙な話だとおれは思った。
「どこに扉があるのやら」
 そうイスカがつぶやくと、ガーリンがとある土台の影を指差した。
「おそらくはあの地下室の中ですな」
 おれは大棍棒を肩に担いだ。


DM:建物の中は天井が落ちて、空がのぞける。そして、床には幅10フィート(約3m)の地下への入り口が開いており、階段が続いているようだ。
イーヴァル:床とか侵入口は石造り?
DM:入り口自体は床に石を貼ってあるようだ。足跡の《追跡》は特技がないと難しいね。物音を聞くと(〈聞き耳〉ころころ)。やはり下から話し声が聞こえてくる。進入口の奥、右手側と左手側からだ。右手側は複数人のようだが内容まではわからない。
イーヴァル:明かり差し込んで確認するが、どうなってる?
DM:見える範囲でまっすぐ降りてく。そして20フィートほど先で広がってるようだ。
イスカ:ふむ、これはアレだな階段にグリースかなんかかけて「もはや逃げられんぞ」と叫んでおびきだし上がって転んだ所に油をぶっかけ火をつけてうきゃきゃきゃあと槍で突きながら矢を放ちたい場所だな。
サーリア:……よくもまぁそんな血生臭いアイデアが場所見ただけですらすらとでてきますわねぇ(遠い目)。
ガーリン:ところで、ソフィーア殿。まさかとは思うがグリースを持ってたりしませんかな?
ソフィーア:ありますよ。何を言ってるんですか(しれっと)。
ガーリン:何を言ってるんですかと言ってくれやがったな(笑)。「あー、聞くがお嬢さん。あなたはどのような教育を学院とやらで受けてきたのかね? 」
ソフィーア:私が学院で受けた教育というのは、「召喚術系統の呪文というものはかくのごとく呪文抵抗に影響しないのである。 ゆえにどのような場合でも有効」ということで……。
DM:お前のいた学院はどんな学院だッ! 何でそんなにガチなんだよっ(怒)。
ソフィーア:いや、今のこそ実はキャラとしての発言なのですよ、つまりロールプレイ。この娘は秩序の属性どおり先生から教わったことを実行する娘なのです。と、これはプレイヤーとしての発言ですが。
ガーリン:ああつまりこういいたいのだね君は、『この子は先生の言うことを聞く素直な良い子だ』と。
ソフィーア:でも応用力がききません。ここがさらにキャラのポイント(しゃあしゃあと)。
DM:本当に応用力効かないんだろうなっ! ロールプレイで表現しろよっ!
ガーリン:まったくししょうのかおがみたいものだ(棒読み)。
イスカ:とはいえですね、我々の真意としてはなるべく中でドンパチしたくないのですよ。
ガーリン:地の利は向こうにあるからのう。
イスカ:いや、扉が傷つくとお値段が下がってしまいますからな(本気)。
ガーリン:ああ、すばらしい(さらに棒読み)
DM:(タメイキ)……で、どうする?
イーヴァル:イスカかサーリアに先に偵察をしてもらうか?
イスカ:いや、その必要はないだろう。ここにいるのは山賊である以上、
イーヴァル:うむ?
イスカ:動いているものは敵だ(きっぱり)。
サーリアちょっとお待ちなさい
イスカ:なにっ! なんか間違ってるか俺?
ソフィーア:「いえ、正しいと思います。私、学院では“気づかれる前にやれ”と教わりました」
DM:だからどんな学院だよッ!
サーリア:……。よろしいですか? まずは説得を試みましょう。

 しばし静寂。

ソフィーア:……えーと、説得。説得って……、今誰か説得って言いませんでした?
イスカ:誰だ? そんな聖人は誰だッ? (きょろきょろ)
ガーリン:(感極まって)いや、それがし心が洗われるような気がいたす。まことにその通りじゃ。
DM:あー。ところで、イスカは“交渉人”じゃなかったかね(なげやり)。
イスカ:いや、もはや交渉の段階は過ぎている。
DM相手にも会わんうちに、交渉の段階を過ぎるなっ! 
ソフィーア:でも、相手には行商のかたが話していた大きな狼、ワーウルフがいるかもしれないですし。
サーリア:正確には「ワーウルフに率いられた山賊団がいるらしい」ですね。正確な所はまだ未確認ですわ。
DM:おっと待った。そういえば君たちはワーウルフについての知識をどれだけ持っているのか、そもそも隊商の話していたのが“ワーウルフ”であるのかも確認していないぞ。
サーリア:! 確かにその通りですわね。
ソフィーア:(ころころ)〈知識:地域〉で難易度24、一般的なワーウルフなら成功です。
イスカ:なにッ! 「知っているのかソフィーア! 」
ソフィーア:「秘術を心得ているものにとって、この程度は常識です」、つーん。
DM:(基本難易度が10で、HDの3を足して難易度は13。目標を10上回っているから、基本にくわえて2つほど情報を追加か)
 行商人の話にあった、二本足であるく大きな狼というのは、ワーウルフの中間形態であると考えられる。
 ワーウルフの噛みつきを受けてセーヴに失敗すると、ライカンスロピーという病気にかかりワーウルフとなってしまう。あと、連中は銀の武器でないと傷つかない。
イーヴァル:うーむ、あれは冬の炉縁語りのものとばかり思っていたが。
ソフィーア:いったん街に戻って銀の武器を揃えるというのはどうでしょう?
ガーリン:それは決して悪い考えではないが、だが2つの理由で受け入れがたい。1つには期限。そしてもう1つは銀の武器が効くというが本当の話か、我々はまだ確かめていないということだ。
DM:慎重ですね。
ソフィーア:一応、錬金術銀のダガーならあります。私が持っていてどうするという話もありますが。
ガーリン:なら、銀のダガーは念のためにイスカに渡しておこう。
イスカ:……つまりそれは交渉担当の俺が、急所攻撃しにいけというのか?
ガーリン:〈交渉〉が失敗した時点で一番近くにいるのはイスカであるからな。
イスカ:まぁ、ちょっと待て(DM:あ、逃げた)。大事なことは優先順位を決めることだ。方針を確認しておこう。
ガーリン:うむ、愚僧の考えを言うと、彼らが山賊になったのも理由があろう。ここを立ち去ってくれさえすれば、あえて彼らを捕らえて法の裁きにかける必要はないと考えておる。
 ゆえに我々の立場を明らかにして、『お前達はファブスター卿の敷地にいる、不法占拠なので出てゆけ、おとなしく出て行けば罪は問わない』とゆこう。
イスカ:ならば降伏勧告からだな。その後は対応にあわせ、
 いち、降伏した場合。何も考えなくていい。
 に、しなかった場合、そしてむこうも何もしてこなかった場合。その場合は、すでにバレてしまっているので待ち伏せを警戒しつつ侵入。
 さん、降伏せず、何かしてきた場合にはこちらもやることをやる。わきの下から銀のダガーを滑り込ませ、グレートクラブを脳天に叩き込む。OK?
ガーリン:とはいえ、〈交渉〉判定で良い目を振れば、あとから20面を何度も振る必要がなくなる。まずはここから大声で怒鳴って、交渉だ。がんばれ。

 侵入口に近い所にサーリアとイスカ、すぐ後ろにガーリンとイーヴァル、すこし離れて視線を確保した場所にソフィーアがクロスボウを装填して位置を取る。

イスカ:こほん、「お集まりの皆さん! 」
ガーリン:さんさんさんさん……(エコー)。
DM:「なんだなんだ、変なヤツが来たぞ」といぶかしげな声(フィギュアを出す)。
イスカ:「私はファブスター家から委任された財産管理人です」
ガーリン:ですですですです……(やはりエコー)。
イスカ:「あなた達は屋敷を不法に占拠しています」
ガーリン:ますますますます……(さらにエコー)。
イスカ:「ここはファブスター家の財産です」
ガーリン:ですですですです……(なおもエコー)。
イスカ:「速やかにお立ち去りくだされば」
ガーリン:ればればればれば……(それでもエコー)。
サーリア:……ガーリンさん。その音響効果、非常に要らないです。
DM:出てきた連中は無精ひげに垢じみた顔、泥とほこりにまみれたスタデッド・レザーアーマー、腰には山刀(ハンドアックス扱い)をぶっ差している。まさしく敗残兵かごろつきのなれの果てといったあんばい。見えている限りは6名。イスカを上から下までとっくりとねめつけた上で、フン! と鼻を鳴らす。
 「てめぇ何をしに来やがったッ! 」とえらく敵対的な雰囲気だが、すぐに荒事に出る気配はない。態度は“敵対的”だ。では〈交渉〉いってみよう。
ソフィーア:(後ろのほうでごそごそと)イスカを大きくしたら、〈交渉〉するとき有利ですよね。
DM:それは〈交渉〉ではない、〈威圧〉
ガーリン:〈交渉〉に失敗した時点で〈威圧〉だ。順を間違ってはならぬ。
イスカ:我々、なぁんて穏便なんでしょう! よっと(ころころ)、難易度20まで。
DM:(結果は結果だからなぁ)では丸一分かけて状況を説明した所、向こうは刃物に物を言わせようという態度から、話は聞くがまだヤる気という態度(“非友好的”)に移行します。ちッ。
サーリア:残念がるんじゃありません!
イスカ:ちッ。
サーリア:そこもっ!
DM:連中は「頭を呼んでくるから待ってやがれ」と言う。
イスカ:下っぱと話しても仕方ないからな。かまわん。
DM:やがて、奥から不明瞭な共通語で罵る声が聞こえてきた。「こんなときにまで俺の手を患わせるんじゃねェ」ってね(ワーウルフ1体とウルフ2体のフィギュアを出す)。


 喉で話すような、はっきりしない声だった。だが、苛立ちは明確に伝わってくる。暗闇から抜け出して来た姿は一応、人の姿をまだとどめていた。
 むっと、獣臭がこもる。
 そいつは痩せた身体を深くかがめており、歩くたびに足指の爪が石の床にあたって音を立てた。ランタンの明かりの中に突き出された顔は、全体が短い灰色の毛に覆われている。長い鼻面の下には肉食の凶悪な牙がのぞき、その目には粗暴な獣性が隠されることなく輝いていた。

DM:君たちの目の前に出た時点で、すでに半人半獣の中間形態だ。威圧するにはこの形態のほうがいいからね。「なんの用だ? 」
イスカ:「我々はファブスター卿の管財人です」
ワーウルフ(DM):はあァ? ほおって置いて今更出てきて主人面もねェだろうが? 使ってねンだ、おれたちが使わせてもらうゼ。
イスカ:「表に立て札があったじゃあないですか? 」
ワーウルフ(DM):「わりィな、学がないもんでよ、文字なんざ読めねンだヨ」。というと手下どもががはがはがはと品なく笑います。
サーリア:よろしいですか、たとえ文字が読めなくても法は等しく適用されるのですよ(懇々と訓えを説く口調で)。
全員:おー(感嘆)。
DM:いや、そこでプレイヤーが感心するなよ! まったく! じゃあ、こちらの言い分をどれだけ頭目相手に上手に伝えられたか判定しよう。
イスカ:(ころころ)うむ、〈交渉〉で27だ。
DM:へ、27? (うそん、状況ペナルティ2つけても、“敵対的”から“中立的”まで行っちゃうぜ? それじゃいきなり殴るわけにはいかないじゃん)。マジ?
イスカ:うむ。DMのアドバイスどおりに相乗効果を重ねた結果だ。
DM:(ううん……ま、仕方なかんべ)では、ワーウルフはイスカの流れるような説得により、聞く様子など見せていなかったのが話を聞く態度に変わります。
「じゃあ、話をしようじゃねェか。……いくら出す? 」
ガーリン:うむ、この仕事、報酬はボーナス無しでいいとこ1300。そうなれば、やはり出せても500gpだ。しかしこれは最大額。
ソフィーア:本当に扉があるのかもまだ確認していません。
ガーリン:そしてこの額は積みすぎだ、かえって怪しまれる。100からはじめて200までだろう。200で失敗したら〈威圧〉に入ろう。
イスカ:100gp……、こいつらに100gpか。……あー、ヤッちまいてぇ(ぼそ)
DM:へ? なんか言った?
イスカ:あ、いや、なんでもないですよ。プレイヤー発言、プレイヤー発言。
DM:では100gpという話をされたので、頭数で考えよう。ワーウルフが30gp、手下が10gp、狼分が10gp。「この間襲った村の方が実入りが良いッすよ、頭! 」と手下が言うね。
イーヴァル:村? 聞いたことあったっけ?
DM:さっき立ち寄るかどうか相談した最寄りの村、サクストン村のようだね。推論すると。
イスカ:もしかして、立ち寄ってたら壊滅してたりしたのがわかったのか?
DM:さあ、どうだか♪
ガーリン:壊滅させたら、後々こいつらが困る筈だ。そんなことはせんだろう。
イスカ:ふむ。この辺の村を荒らして100gpもアガるのか?
ガーリン:……吹いてると思うがの。
ソフィーア:サクストン村の規模は? 〈知識:地域〉なら17と出ましたがわかりますか?
DM:(ちっ、気づいたか)サクストン村の規模は“集落”だ。いいよ、こちらでデータを言おう。gp上限は40gp、総資産は80gpだ
イスカ:あるわけない、こいつら吹いてやがるな。大体100gpてな破格の値だぞ、ふざくんな。
DM:OK、先ほどの〈交渉〉の結果ワーウルフの態度は“中立的”まで行ってます。「話しにゃ乗ろうじゃねェか。けど、もう少し出せ」
ガーリン:もう一度〈交渉〉して説得できんか。いい出目振っちゃえば100で手を打つかも知れん。
DM:では、もうちょっと出せるんじゃないかと勘ぐったワーウルフは、君たちの態度を〈真意看破〉する。そちらは〈はったり〉で対抗してくれ。
イスカ:ふむ。では、体のいろんな所を探り、ひっくり返して数えるぞ。「えーと、これで80。坊さま、10ほど持ってませんか」
ガーリン:「う、うむ。あるはずだ! 」
イスカ:「ありますよね、ここに来るとき100数えてきたんだし」(しれっと)
ガーリン:「う、うう。まるで身を切られるようじゃのう」
DM:よし、では今のガーリンのはイスカの〈はったり〉判定への“援護”とみなします。イスカは?
イスカ:援護分を足して……難易度25の〈はったり〉だ。見抜いてもらおう。
DM:(12じゃ見抜けないなぁ……)。「お前らほんとに金ないのんか? 逆さに振っても鼻血も出そうにないな(呆)」
イスカ:「オオウ、財布ノソコニ銀貨ガ5枚」
DM:「じゃあ、そいつもよこせ」
ガーリン:「ああっ(詠嘆)、100gpと5sp、それは浄財にございますぞ! 」
イスカ:「仕方ガナイジャアアリマセンカ、アキラメマショウ、がーりん殿」(しゃあしゃあと)
DM:「よし、これで久しぶりにうまい肉が食えそうだ」
サーリア:ふぅ、何とか穏便に済みましたね。
DM:「行くぞ、野郎ども! 奥の娘もふんじばって連れて来い、売ればいい金になる! 」
全員:え”!

薄氷渡る〈交渉〉戦!


イスカ:(ふぅ)……ありゃあと、天を仰ぎ、肩をすくめます。ソフィーアの方をちょっと見て……、
ソフィーア:無言でうなずきます。グリースの射程内ですよ、敵は。
イスカ:「はぁ……娘さんといいますと? 」(足元の階段をちょっと見る)。
DM:「俺達色男だからよ、離してくれなかったんだ、むふふふ」。
ガーリン:(きっぱりと)いやいや、そんなことはございません。
DM「おれ達の顔がまずいってのかッ!!」
ガーリン:「愚僧には人間のみめよさはわかりませんが、ちょっと彼女にあわせてくれないでしょうか(必死)、彼女達が喜んでついていくというのならよし、そうでないなら困ります」
DM:手下どもは左手奥の部屋から誰かを連れ出そうとしてます。
イーヴァル:「話を済ませてしまって、金を取りに階段を上らせよう。ここまで来させてケリをつけよう」(イスカに小声で)。
ガーリン:せっかく丸く収まると思ったんじゃがのう。いくらなんでもこれは見過ごせんなぁ。
イスカ:ここで、「げははは、娘っこの命なんぞわしらにゃ関係ねえからのお」なんて言ってしまうわけにはいくまいからなー。
サーリア:そんなリプレイ載せられません。
DM:「やめて、あんた達! 触らないで! 」と娘の悲鳴。
ガーリン:これ! 娘ごが嫌がっておるではないか!
DM:「この子は照れ屋さんなのさ、げはははは」(もはやノリノリ)。ごろつきは3人がかりで娘を抱えあげ、出て行こうとします。
イーヴァル:娘は一人か……?
ソフィーア:ふん、なるほど。だんだん心が冷えてまいりました。娘にかまってるなら武器から手は離れてますね?
イスカ:……ヤるか。「ええと、それはもしやサクストン村の娘では? 」
ガーリン:小声で「100gpまでなら、娘のために出しても良いのだが」と言うが……。盾は構えておこう。
イスカ:……(戦わないのは)いろいろと無理な気がしてきた、うん(諦)。
サーリア:いや、待ってください。イスカさん、彼女を買い取るという方向で再度、もう一度交渉していただけませんか?
イスカ:あー……。
サーリア:もう一度です(懇願)。
イスカ:「サクストン村の娘さんといえば、ほら、来るときに村で頼まれごとした娘さんではないでしょうか? 」。……うむ、もう一度やろう。
ガーリン:「……それだのう」。もう一度やってみるかのう。
イスカ:「我々がここにゆくと話したら、村の人が、『何とかその娘の身柄を買い取ってもらえないかな』みたいな話をしていたのですよ」
ガーリン:「年取った両親がのぉ」
DM:「ふーん、じゃあ、いくら出す? 」
イスカ:これは旦那様の金ではなくて、しけた村人から預かってきた金ですからねぇ……。
DM:「出所なんざ聞いちゃいねぇさ、額の話を聞こうじゃねぇか」
イスカ:(ガーリンに)「いくらありましたー? なんか銅貨や銀貨ばっかだったんであんまり数えていなかったんですけど」
ガーリン:(はげしく体中のポケットをひっくり返す)
DM:「話になんねぇな、連れてっちまえ! 」
イスカ:「あー、待った待った。割とありますよ」
DM:ではワーウルフが出てきてのぞき込みますが?
ガーリン:「(辛そうに)教会補修のためのこの浄財とっ! (泣きそうに)、この教区の人々から預かった、さまざまの金。これをすべて合わせると、ご……50gpになります(哀れっぽく)! 」
DM:(オイ、さっき100gpまでは出せるとか言ってなかったか? )
イスカ:どうですかね?
DM:うーん、むこうはこの時点でこう考えるね。つまり、立ち退き料100gpそこで空ッけつといっておきながら、いま新たに50gp出てきた。だからまだまだ取れるんじゃないかと。
イスカ:「良いですか、先ほどの100gpは旦那様のお金。で、これはしけた村人からのお金。出所が別だし、これ以上はもうホント出ませんよ」。と、言ってみよう。
DM:じゃあ、改めて〈はったり〉と〈真意看破〉の対抗判定。そちらには状況ペナルティをつけます。ガーリンの援護は先ほどと同様に処理してください。
イスカ:〈はったり〉で難易度16まで。
DM:やっぱりそっちの勝ち。「50gpか……」
イスカ:というかですね、「その娘は見た所普通の村人、50gpという額は普通の奴隷の値段より高いですよ」
DM:(たたみかけに来たか)OK。受けよう。「よこせッ」
ガーリン:「ああっ」。身を切られるような悲鳴を上げます(笑)
DM:で、下卑た冗談を浴びせかけて連中は出てゆこうとする。OK?
イスカ:タイヘン悲シイ顔ヲシテイマス。
ガーリン:アア、教区ノ人々ニナント詫ビタラヨイノデショウ。
ソフィーア:顔は覚えておきます。ええ、しっかりと。
イーヴァル:むー、あー、えー。ソフィーア、スリープ無い?
ソフィーア:残念ながらスリープは持ってませんが、カラー・スプレーはあります。反対はしません。
サーリア二人を止めます
イスカ:いいかあ、やりたいてんならACがもっと上がってから言え!
ガーリン:そうじゃ。愚僧とて「今、自分が5レベルであったなら、いや4レベルでも」と思っておる。
イーヴァル:いや、わかった。みんなの努力を無駄にはしない。おれが悪かったよ。それよりは、連中が街道に出て、そのままこの屋敷から去るのを見届けるのが正しいやり方じゃないかな。
ガーリン:それはそうだ。
イーヴァル:そのうえで見送りつつ後ろからスリープを撃つというのは大賛成なんだが。
ガーリン:誰かそいつを黙らせろ。
イスカ:……しかたない、ここは聞き分けよう。トータルとして損したわけじゃないんだ。たぶんなッ
ガーリン:よし、切り替えるぞ(手をパンパンとたたいて)。穴にもぐる。さあ隊列だ。
DM:ではさっそく。
ガーリン:それはそれとして、おぼえてろよ。
DM:……。

このシーンの裏側


 戦わずに終了してしまい、ちょっとビックリ。山場になるかもしれなかった遭遇だっただけになおさらだ。
 実際のところ戦ったならば、ガーリンが言うように受ける損害も大きかったろう。仮にライカンスローピィにかかってしまったなら、治療のためにさらに金がかかる(ちなみに呪文によってライカンスローピィを直す場合には最低でも270gpほどがかかる)。支払った金は総計150gpなので、安全を金で買ったと考えれば納得できる取引だろう。
 DMとしては戦闘なしで切り抜けられちゃうと、ちょっと寂しくもある。が、PCたちのリソースは削っているし、キャラの個性も特性も生かされているから、十分歯ごたえのある遭遇だったろう。
 リプレイでも分かる通り、キャラクター達もどうするかは割と悩んでいた。とくに想定外だったのは捕らわれた村娘で、このときばかりはマスターも戦闘を覚悟した。2回目の〈交渉〉がうまく行ったのはダイスの目もあるけど、イスカの高い〈交渉〉技能のおかげ。
 不平を言いながらもきっちりと仕事はしているあたりはお見事(一番不穏な言動が多いのもこの人なんだけど)。


第3回に続く


『トーチ・ポート 事件屋稼業』次回の掲載は11月中旬予定です。
今回のリプレイはD&D対応シナリオ集「A Seven-game Match」に収録のシナリオ、スフィアパイクの扉をもとに書かれています。このリプレイを見て興味を持たれた方は、ぜひこちらのシナリオ集も併せてご覧下さい。