『シャーン:塔の街』 プレビュー:都市のモンスター

ローチ・スロール
 人間だとばかり思っていたものが、皮と肉を古着のように脱ぎ捨てた。その抜け殻からあらわれたのは、なんと巨大なゴキブリではないか。先端に鋭い爪をつけた6本の肢、鞭のようにしなる触覚、乳白色をした分厚い甲殻……。虫のくせに直立を保ち、まるで威嚇するように4本の肢を蠢かせている。

 ローチ・スロールは人間の皮をかぶった巨大なゴキブリであり、自己の生殖サイクルを永続させるために人間を装っている。ひとたび脅威がせまると人間の皮をかなぐり捨て、爪を使って接近戦を挑んでくる。
 ローチ・スロールの一生は人間の体に植えつけられた卵の状態から始まる。卵から孵ったローチ・スロールの幼虫は宿主の脳と内臓を食いつくしてしまう。このプロセスは、たいてい宿主が眠っている6時間から8時間のあいだに完了する。その際、宿主の皮膚と筋肉だけは手をつけずに残しておき、ローチ・スロール自身の体から栄養分を供給することで腐らないようにする。こうしておけば、ローチ・スロールは残存している宿主の神経系統を利用し、生きている人間に混じって何食わぬ顔で歩きまわることができる。そればかりか、宿主の目と耳をとおして外界を把握し、宿主の声帯を刺激して言葉を発することさえできるのである。ただ、宿主の生前の記憶はいっさい失われているため、ローチ・スロールも宿主になりすましてその友人知己に近づこうとまではしない。とにもかくにも、ローチ・スロールは人間社会に極力溶け込むように努力し、6カ月から2年の月日をかけて体内で卵を育てる。そうやって卵が十分に成長したあかつきには、それを産みつけるための犠牲者を探しにかかるのである。