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ドラゴンは残酷で狡猾だ―『ドラコノミコン:クロマティック・ドラゴン』 6月30日発売!

第1章:ドラゴンについて

竜の怒りの前に立ちはだかる気か!

――ウィリアム・シェイクスピア(安西徹雄訳)

 ドラゴンほど、その説明にたくさんのインクが用いられたクリーチャーは他にない。太古の、高貴で、だが獰猛な獣であるドラゴンは、ガイドブック、バードの物語、太古の本や巻き物の主題として好まれている。ドラゴンにまつわる知識を得るには生命と四肢を危険に晒さねばならない。なにしろドラゴンは強欲で、その秘密を油断なく守り、しばしば腹を空かしているから。
 専門家によればドラゴンは、自我がある種族のなかでは、この世界に最初に出現したものであり、その寿命は数千年に及ぶという。かくも豊かな経験を蓄えたドラゴンは歴史を体現している。最年長のドラゴンは莫大な知識と最も深遠な太古の秘密を有している。ドラゴンは、宝の山や栄光を求める騎士が挑む目標などではない。ドラゴンは賢者であり、神官であり、預言者ですらあるのだ。
 ドラゴンは威厳があり、神話に包まれている。ドラゴンの出現は吉兆や凶兆とみなされることがある。実用主義を貫いている賢者はドラゴンを、翼があって暖かい息を吐くただの大きな蜥蜴とみなそうと頑張っているが、ドラゴンが有する驚くべき、魔法の、そして幻想的な能力を目の当たりにすれば、そのような努力は無に帰してしまう。
 ドラゴンは、本質的に、神話の存在なのだ。
 この章には以下の話題が収録されている。

  • 起源:クロマティック・ドラゴンの誕生と歴史。
  • 生理学:クロマティック・ドラゴンの解剖学的組織構造に関する詳細な研究。
  • ライフサイクル:ドラゴンの一生。卵からエインシャントまで。
  • 価値観と心理学:クロマティック・ドラゴンはこの世界をどう見ているか。
  • 社会:ドラゴンの社会構造の解説。
  • 言語:竜語と文字。
  • 宗教:ドラゴンが好む神々。
  • クロマティック・ドラゴンの詳細:最も一般的な5種類のクロマティック・ドラゴンであるブラック、ブルー、グリーン、レッド、ホワイトと、それほど有名ではないブラウン、グレイ、パープル・ドラゴンの概観。


  • 起源

     ドラゴンの起源について何かを知っていると主張するのは最も傲慢な狂信者だけだろう。そしてそのような主張は話半分に聞くべきだ。だが賢者が知っている伝説や知識は何世紀も前まで遡り、過去にあったかもしれない何かを示唆している。時々新しい物語が日の目を見る。そしてそれにより、ドラゴンの誕生に関する既存の知識や仮説が再評価を促される。


    最初のドラゴン

     5つの主要なドラゴン族(クロマティック、カタストロフィック、メタリック、スカージ、プレイナー、詳細については『モンスター・マニュアル』参照)は共通の起源を有する。大部分の記述はイオ神に対する言及から始まっている。
     伝説によれば、プライモーディアルが創った新しい世界で浮かれ騒ぐことができるように、イオは自身に似せてドラゴンを創ったが、神気は与えなかった。イオにとって、ドラゴンは定命の形態の雛形だった。ドラゴンは“この世界”に住んだが、“元素の渾沌”の力が彼らの血管の中を流れ、燃え盛る炎や凍てつく冷気の波となって彼らの口からほとばしった。彼らはまた、鋭い心と気高い魂を形作ったため、自我があるすべての定命の存在とともに、アストラル海と繋がった。


    大破壊

     “この世界” の創造に続いて起きた神々とプライモーディアルの戦争中に、“恐怖の王”と呼ばれていたプライモーディアルがイオと、イオを守っていたドラゴンを攻撃して殺害した。ある1つの記述によれば、真っ二つになったイオの死体から、ドラゴンの神であるティアマトとバハムートが立ち上がったという。また別の伝説によれば、ティアマトとバハムートはイオの最も古い創造物のなかの2柱であり、父が死んだ時にその神気を受け継いだという。
     イオの子供たちのなかで生き残った者たちは、自分たちの地位が当初考えていたほど安全でないことに気付いた。変化する世界への適応を余儀なくされた彼らは多様な哲学とライフスタイルを選択した。なぜなら、彼らの性質もまた、多様だったから。
     生き残ったドラゴンのなかには、プラティナム・ドラゴンと呼ばれているバハムートに追随することにした者がたくさんいた。彼らは最初のメタリック・ドラゴンになった。長年に渡ってバハムートが悪に対抗して正義を支持し、抑圧された者たちを解放するにつれ、ドラゴン以外のクリーチャーも彼を正義、守護、高潔、名誉の神として崇めるようになった。時が満ち、彼はメタリック・ドラゴンとの関係よりも、それらの特性でより良く知られるようになった。現在、すべてのメタリック・ドラゴンは自分たちの始祖としてバハムートに畏敬の念を抱いているが、全員が彼を崇拝しているわけではない。
     イオの死を乗り切ったその他のドラゴンのなかには、“元素の渾沌” との物理的な結び付きを利用することにより、自身の内にある力を外部に解き放つことができるようになった者もいた。彼らは歩く災害になった。“この世界”を震撼させる幻想的な大災害の形態を取ったのだ。そのような大災害はその後何千年にも渡って破壊を継続した。山が爆発したなら、噴き出す溶岩とともにカタストロフィック・ドラゴンが飛び出すかもしれない。台風が荒れ狂ったなら、その中心にカタストロフィック・ドラゴンが潜み、破壊をおおいに楽しんでいるかもしれない。カタストロフィック・ドラゴンは富や権力にほとんど興味がない。彼らは“この世界”に自身の印をつけたがっているのだ。文字通りの意味で。そして他者に自身を恐れさせ、機嫌を取らせたがっているのである。
     イオの死を乗り切ったドラゴンのなかから勃興したもう1つのグループとして、スカージ・ドラゴンが挙げられる。カタストロフィック・ドラゴンが“元素の渾沌”との繋がりを利用したのと同様に、スカージ・ドラゴン(リノームとも呼ばれている)は現実そのものとの繋がりを利用した。彼らは生きているクリーチャーに苦痛を与える方法を修得した。ほぼ例外なく悪であるスカージ・ドラゴンは肉体そのものを使用した近接戦闘を楽しんでいる。
     イオの子供であるドラゴンのうち、前述した者以外の生き残りはティアマトと同盟した。自身の父を殺害した“この世界” に対するティアマトの憎悪が、彼女のすべての行為を彩るとともに、略奪と疑念にふけるドラゴンを引き付けた。それがクロマティック・ドラゴンである。クロマティック・ドラゴンはしばしば人型クリーチャーの敵になったため、最も有名なドラゴン族になった。バハムートと同様に、ティアマトもドラゴン族以外のクリーチャーの興味を引く神になった。現在、富、強欲、嫉妬を司る悪の神として、彼女は侮辱されたら必ず復讐せよと自身の信者に命じている。クロマティック・ドラゴンの大部分はこの命令を守っている。
     プレイナー・ドラゴンは5番目のドラゴン族に分類されているが、彼らが出現したのはイオが死に、その後その他のドラゴン族が成熟したずっと後のことである。他次元界に移民したドラゴンはその環境の影響を受けた。時として、根本的に。最も影響を受けやすいのはクロマティック・ドラゴンであるように思える。こうして誕生したプレイナー・ドラゴンの後の世代は、“この世界”にいる親戚にほとんど似ていない。


    生理学

     ドラゴン殺しになりたがっている者は皆知っておくべきだが、ドラゴン(ワームとも呼ばれている)はただでかいだけの獣でもなければ、翼ある蜥蜴でもない。クロマティック・ドラゴンはその能力故、食物連鎖の頂点に位置しており、自然世界で最も強力な狩人になっている。


    ドラゴンの特性

     ドラゴンをドラゴンたらしめているものとは、正確には何だろう? 大いなる力がある爬虫類の魔獣なら他にもいる。いくつかの特徴をドラゴンと共有しているクリーチャーもいる。たとえばドレイクとかワイヴァーンとか。ドラゴンとそれ以外のものを隔てているものは何だろう?
     すべてのトゥルー・ドラゴンは明確な年齢段階を有し、そのような年齢段階を進むにつれて力を増す。すべてのクロマティック・ドラゴンはブレス・ウェポンを有するとともに、超自然的な能力をたくさん有している。たとえば圧倒的な恐怖を与えるオーラとか。すべてのクロマティック・ドラゴンはまた、基礎的な身体構造を共有している。


    外部構造

     鱗に覆われ、4本の脚と1本ののたうつ長い尾があるドラゴンは、一見すると巨大な爬虫類に見える。それにもかかわらず、ドラゴンはそれ自体が1つのカテゴリーだ。肉食哺乳類と爬虫類の特徴を併せもつ。それどころか、ドラゴンの外部構造は爬虫類よりも哺乳類に近い。なにしろ4本の脚は、胴体の脇に生えているのではなく、その直下に生えているのだから。


    感覚器官

     ドラゴンの目の中心には垂直の細い瞳孔がある。猫のそれに似ている。しかしながら、猫の瞳孔は暗くなるとよりたくさんの光を入れるために広がるのに対して、ドラゴンの瞳孔が広がると、その血液の中を流れている原始のエネルギーがそこから発散する(“内部構造” 参照)。この微量の魔法の滲出によってドラゴンは暗視を得ている。

    顎と歯

     鰐と同様に、ドラゴンの顎を閉じる筋肉は開く筋肉よりも強い。とはいえ、ドラゴンが顎を開けていたいと考えているなら、それを閉じることができるのは最も強い敵だけだ。歯も鰐の歯に似ており、引き裂いたり穴を開けたりする犬歯、肉を骨から引き剥がす門歯、保持したりすり潰したりする一連の臼歯がある。


    とげ、爪、角

     すべてのドラゴンは何らかの突起物を有している。それはとげかもしれないし、爪かもしれないし、角かもしれないし、それらすべてかもしれない。そのような突起物は歯と同様の物質でできている。角ある動物の大部分の角は角質でできているが、ドラゴンの突起物は違う。また骨と同じ組成でもないが、似てはいる。
     とげは筋肉で固定され、一連の靭帯によって骨格に接続している。爪と角は骨格に直接接続している。角ととげは、ドラゴンが成長すると大きくなる。爪は歯と同様に、ドラゴンのサイズ分類が大きくなると抜けて生え替わる。


     ドラゴンの皮の触感はドラゴンの種類にある程度依存している。たとえば典型的なブラック・ドラゴンの鱗の外層は鰐のそれのようにざらざらしているのに対して、グリーン・ドラゴンの鱗は硬化させた蛇皮のようにおおむねつるつるしている。とはいえ、必ずそうというわけではない。たとえば同じブラック・ドラゴンの皮でも、血統が異なれば、その触感は著しく異なる可能性がある。

     クロマティック・ドラゴンの翼の構造は単純だ。軽い骨の構造に、薄い皮でできた膜が張られている。蝙蝠の翼に似ている。
     翼は十分大きいため、ずたずたにでもしない限り飛行能力は損なわれない。そのため、飛行ができなくなるくらいドラゴンを痛めつけるのは難しい。たとえずたずたにしても、比較的速やかに回復する。


    内部構造

     ドラゴンとその他のクリーチャーを区別している要素の多くは体内にある。ドラゴンの鱗と肉は爬虫類のそれにある程度似ているが、体内となると話は別だ。
     以下のセクションでは、(括弧)に入れられている数字はイラストに示されている位置に対応している。


    主要臓器

     脳(1):ドラゴンの脳は大きい。絶対的な意味でも、身体全体との比率という意味でも。脳のかなりの部分は記憶と推論を司っている。その他の部分はドラゴン特有の2つの機能を制御している。1つは神秘的な目の力。もう1つは学習した振る舞いを、本能を司る“爬虫類の”脳(訳注:脳幹を意味する)に注入する機能だ。


     喉頭と気管(2と3):喉頭には一連の声帯がある。人間のそれより若干複雑だ。大部分のドラゴンは狭い帯域の音を用いて話すのを好んでいるが、ドラゴンは鈍い重低音から、人間にはほとんど聞き取れないくらい甲高い絶叫まで、任意の音を発することができる。大部分のクリーチャーと同様に、気管はドラゴンの呼吸が通過する場所だ。


     肺(4):肺はドラゴンの胸腔のかなりの部分を占めている。かくも巨大なクリーチャーの血液に酸素を供給しなければならないためだ。ドラゴンの肺は爬虫類や哺乳類の肺よりも鳥類の肺に似ている。ドラゴンの肺は吸い込む時にも吐き出す時にも酸素を抽出している。


     心臓(5):ドラゴンの心臓はその力の源だ。この4室からなる大きな器官は、この巨大な獣の全身に血液を送り込むことができるくらい強力に脈動している。伝説によれば、ドラゴンの心臓の中に花崗岩を入れることができるなら、心臓の締めつける力によってその石は粉々になるだろうと言われている。


     ファンダメンタム(6):ファンダメンタムはドラゴン固有の臓器だ。かつてはドラゴンのブレス・ウェポンの源であると考えられていた。ファンダメンタムは巨大な血管だ。極めて大きくて複雑な動脈だと思えば良い。ファンダメンタムはエネルギーに富む血液を心臓から、ドラゴンの消化器の一部をなす上胃に直接導いている。


     消化器(7):クロマティック・ドラゴンの消化器には嚢状の器官が2つある。より小さい“上胃” と破砕胃の2つだ。心臓からファンダメンタムを通って転送された元素エネルギーは、必要とされるまで上胃に留まる。このエネルギーは消化に使用されるか(その場合は食べ物が食道からやってくるたびに破砕胃に流れ込む)、もしくはドラゴンのブレス・ウェポンを構成する。


    筋肉

     ドラゴンの筋肉組織は、首から尻にかけては猫科の大型肉食獣のそれにある程度似ており、首の回りと尾の回りについては錦蛇のそれにある程度似ている。他に類を見ないのは、翼の根元と胸の回りだ。


    骨格

     ドラゴンの骨格は500以上の骨からなっている。筋肉と同様に、首と尻の間にある骨格(脚と胴の骨)は猫科の大型獣の骨格にある程度似ているが、首と尾の骨は蛇のそれに似ている。翼とその周辺の骨は、筋肉と同様に、他に類を見ない。


    代謝

     ドラゴンは爬虫類に見えるため冷血であると人々は思っている。実際には、ドラゴンは環境に熱を依存しておらず、体内の温度を自前で一定に維持している。広い意味では、ドラゴンは温血だが、真の温血クリーチャーは環境の温度が下がった時に自身の代謝速度を上げ、環境の温度が上がった時に自身の代謝速度を下げるとともに熱を発散する(汗をかいたりあえいだりする)ことによって自身の体温を維持している。
     一方、ワームはそれと異なる。その血液中を流れている元素エネルギーが、外部環境と無関係に、自身の体温を適切な範囲に維持しているのだ。温度条件がないブレス・ウェポン(毒や酸のブレス・ウェポンなど)を有しているドラゴンでさえ、元素エネルギーを使用して体温を維持している。言うまでもないが、火や熱に基づく攻撃を有するドラゴンが最も高い体温を維持しており、冷気や死霊エネルギーを使用するドラゴンは低い体温を維持している。


    食べ物

     ドラゴンはその消化過程の一部として超自然的なエネルギーを使用しているため、あらゆる種類の食べ物を食べて消化することができる。彼らはまた、他の生きているクリーチャーの食べ物とはならないような物質も食べることができる。
     ドラゴンは肉食獣だ。食物連鎖の頂点にいる本能の狩人である。最も消化が容易な食べ物は肉やその他の有機物だ。肉が手に入らない場合、ドラゴンは大きな植物を食べる。たとえば木とか、大きな低木とか。


    魔法のアイテムを食べる

     稀に、ドラゴンは魔法のアイテムを食べるかもしれない。自身の宝の山に付け加える代わりに。ドラゴンの超自然的な消化系は、魔法でない物体よりも魔法のアイテムの方が容易に消化できる。ドラゴンは魔法のアイテムから、肉と同じくらいの栄養を得る。とはいえドラゴンが飢えを癒すだけのために魔法のアイテムを食べるのは、餓死しそうなくらい飢えた場合に限られる。


    ライフサイクル

     他のクリーチャーと比べると、ドラゴンのライフサイクルと寿命の長さは、その能力形成と、さらにはその人格形成にさえも、より多く寄与している。暴力や病気を除けば、最も短命のクロマティック・ドラゴンでさえ2,000年は生きる。他のドラゴン族(メタリックなど)のメンバーはクロマティック・ドラゴンより長生きするかもしれない。
     ドラゴンの研究についてちょっと齧っただけの者でさえ、ドラゴンが4つの主要な年齢段階を有していることを知っている。賢者はそれらをヤング、アダルト、エルダー、エインシャントと呼んだ。実際には、ドラゴンはまず最初にもっと早い年齢段階を経なければならない。ワームリング(雛竜)だ。この年齢段階を知っている冒険者はほとんどいない。ドラゴンはまた、トワイライト(黄昏)と呼ばれている最終年齢段階も経る。


    番い

     番いの儀式や関係の詳細はドラゴンの種類によって異なるが、いくつかの共通点はある。ヤング・ドラゴンも番うことができるし、完全に生物学的な衝動に駆り立てられれば(もしくは、時には、愛のためにさえ)実際にそうするかもしれないが、子供を育てる準備が調っているヤング・ドラゴンは滅多にいない。そのようなドラゴンは、卵が生き延びる可能性がそれなりにあるような場所ならどこにでも、卵を打ち捨てるかもしれない。だがそのように打ち捨てられて生き延びる卵はほとんどない。そしてそのような卵から孵ったドラゴンは、自分だけでうまくやって行く方法を学ぶ間もなく他者の獲物になるかもしれない。


     ドラゴンは卵を数個生む。正確な数はドラゴンの種類によって異なる。女性は1年に1回卵を生むことができるが、実際にそうする者は滅多にいない。ドラゴンは人型クリーチャーよりも、自身の生殖システムに対して高い影響力を有している。女性のドラゴンは番うことによって受精卵を生むかどうかを完全に制御することはできないが、そのドラゴンが生殖を望まない場合、受精の可能性は劇的に下がる。


    孵化

     孵化の準備が調うと、ワームリングは卵の殻の中にある物を食べ始める。残っている栄養を吸収するのだ。この活動によってドラゴンの子供が強くなるとともに殻が弱くなる。次にワームリングは殻から出る。その際には側面に爪を立て、物凄い筋力で殻を押してひびを入れ、たまに、既に有しているブレス・ウェポンを使用して殻を吹き飛ばす。


    ワームリング

     新たに孵化したドラゴンは完全な能力を有する。ヤング・ドラゴンよりは弱いが、自分の面倒を見るには十分な能力だ。少なくとも、比較的弱い脅威や捕食者に対しては。孵化したてのワームリングはびしょ濡れで、ある程度弱いが、孵化から数時間以内には疾走できるし、1日か2日も経てば飛行できる。ワームリングの感覚は完全に鋭い。そしてワームリングの精神には両親の知識のかなりの量が刷り込まれている。ドラゴンの記憶中枢と本能中枢が織り混ざっているおかげだ。


    ヤング

     ワームリングがヤング・ドラゴンになる頃までには、おおむね馬と同じくらいのサイズに成長しており、その財宝を集める、住処を作る、そして縄張りを作る本能は燃え盛る火の如くかきたてられている。ヤング・ドラゴンは、強欲と縄張り意識によって親子関係が激しいライバル関係に変化する前に、巣を去らなければならない(もしまだそうしていなければの話だが)。


    アダルト

     アダルト・ドラゴンは、自身がこの世に存在する最強の捕食者の一角を占めているという事実を大いに楽しんでいる。なかでも特に、ヤング時代に成功した者は。自身の宝の山に付け加える物を探している時、彼らはより若いワームよりも、目標を選択する目が肥えている。それなりの量の富を提供してくれそうもない旅人やキャラバンに関り合うことによって、自身の時間を無駄にしたいとは思っていないのだ。とはいえ、それでも彼らはそのようなグループを攻撃する可能性がある。食べ物として、もしくはスポーツとして。


    エルダー

     エルダーになる頃までには、ドラゴンは恒久的な住処を見つけるか作るかしている可能性が高い。既にかなりの宝の山を集めている。既にたくさんの冒険者を引き寄せたかもしれない。自身の縄張りをしっかりと、そして真に確立した。自身の領域の拡大を継続するエルダー・ドラゴンも僅かにいるが、大部分の者は自身の領土に満足している(環境的な変化や飢饉を除けばという意味だが)。彼らはより若いドラゴンとの抗争を自ら開始するというよりも、侵入して来るそのようなドラゴンから防衛する可能性の方が高い。


    エインシャント

     エインシャントになる頃までには、ドラゴンは地上を歩くクリーチャーのなかで最も強力な者の一角を占めている。その住処はほとんど難攻不落だ。その宝の山には大帝国の滅亡以降に興ったどんな王国よりも多くの富が含まれている。その名前(もしくは、その名前のなかの少なくとも1つ)はドラゴンと人型クリーチャーの両方においてあまねく知れ渡っている。そのドラゴンは大部分の国よりも長生きした。


    トワイライト

     ドラゴンでさえ、最後には時の流れに屈伏する。死が近づくと、ワームは賢者が言うところの“トワイライト” 状態に入る(ドラゴンがこの期間を何と呼んでいるかは不明だ。何らかの呼び名があるとしての話だが)。トワイライト・ドラゴンの平均年齢はその寿命から数十年以内だが、ドラゴンのなかには100年以上早くトワイライトに入る者もいる。あるいは、その生涯の最後の数年のみトワイライトに入る者もいる。トワイライトに入らずに死ぬ者もいる。エインシャントの完全な健康状態から、一夜にして老衰で死ぬのだ。
     トワイライトはドラゴンの生涯において、強くなる代わりに弱くなる唯一の期間である。具体的にどう弱くなるかは個体によって異なる。ドラゴンの種類との間に相関関係があるようにも見えない。トワイライト・ドラゴンを登場させたいと考えているDMは、以下の選択肢を1つ以上検討してみて欲しい。もしくは自作しても構わない。


     どれほど強力であろうとも、ドラゴンはやはり定命の存在だ。超自然的な手段で延命した者(たとえば忌まわしいドラコリッチ)を除けば、すべてのドラゴンは最終的に死に至る。クロマティック・ドラゴンの大部分は戦死する。自身の縄張りをライバルから守って、もしくは他のワームの縄張りを侵略して、もしくは冒険者パーティの剣と呪文に屈して。
     エインシャント段階の終わりに達したクロマティック・ドラゴンは途方に暮れる。ドラゴンのなかには意志の力で死ぬことができる種類もあるが(たとえば一部のメタリック・ドラゴン)、クロマティック・ドラゴンはできない。従って、エインシャント段階の終わりに達するくらい強力だった、もしくは幸運だった者は、ゆっくりと衰退してトワイライトへ向かい、さらに弱くなり、そして、最後には、死ぬ。


    環境への拡散

     ドラゴンの神秘的な元素の性質のなかでも最も奇妙な側面の1つは、時々死後に現れる。死んだドラゴンの大部分は長い歳月をかけて腐り、骨と塵と化す。しかしながら、たまに、ドラゴンの心臓と血液を流れるエネルギーが周辺の地域に拡散し、混沌とした環境のエリアが出来上がる。
     この現象が最も頻繁に発生するのはエインシャント・ドラゴンだ。エルダーやアダルトで発生するのは極めて稀であり、ヤング・ドラゴンではほぼ絶対に発生しない。いずれにせよ、どのドラゴンがこのように分解するかを予測する方法はまったくなさそうに見える。エインシャント・ドラゴンでさえ、環境へ拡散するのは20%未満しかいない。


    価値観と心理学

     ドラゴンを理解する真の秘訣は(DMとして登場させる場合であろうと、プレイヤーとして戦闘する場合であろうと)、彼らの世界観を理解することにある。彼らの身体能力に関する知識をマスターするのが開始点だが、ドラゴンは知性ある定命のクリーチャーであるため、人間と同様に思考しているに違いないと決めつけるのは、人間にとってあまりに簡単だ。だがドラゴンは、身体的に異なっているのと少なくとも同じくらい、心理学や思考過程に関しても他のクリーチャーと異なっている。


    傲慢と優越

     ドラゴンは優れた存在だ。その他のいかなる定命のクリーチャーよりも強力で、知的で、富や縄張りを所有するのに相応しく、重要である。彼らにとってこの考えは、ただの独善的な信念などではない。これは基本的な事実であり、生まれた時から知っているものであり、彼らの人格と世界観の拠り所となるものなのだ。このような認識があるため、ドラゴンが人型クリーチャーと関り合う際には傲慢に見えるが、これは人間が抱くいかなる自惚れの概念をもってしても理解できない認識なのである。ドラゴンを謙虚にさせようと試みるのは、風と話そうと試みるのに似ている。あるいは、飢えている人に餓死するなと説得しようと試みるのに。
     ドラゴンがなすすべての行為はこの態度によって彩られている。クロマティック・ドラゴンは人型クリーチャーのことを、人型クリーチャーが動物のことをみなしているのとまったく同様にみなしている。要するに獲物とみなしているのだ。もしくは荷物運搬用の獣であると。どちらになるかはドラゴンの気紛れに依存する。より慈悲深いドラゴンは人型クリーチャーに対して親切に接する。善良な人間が意味もなく動物を傷つけたりしないのと同じだ。だが最終的には、人型クリーチャーは所詮下級のクリーチャーである。悪でないクロマティック・ドラゴンでさえ、ヒューマンやエルフに帰属する何かを奪ったとしてもほとんど気にかけない。それどころか、たまたま通りかかった誰かを食べたとしてもほとんど気にかけない。それは自然の摂理なのだ。
     しかしながらドラゴンは、強力な個人や物凄い数の人々が有する力を認識することはできる。確かに彼らは傲慢だが、何らかの人型クリーチャーが危険であると感じたなら、もしくは自分では容易に手に入れることができない何かを提供してくれるとみなしたなら、ドラゴンはそのような人々と交渉するだろう。だがそれでも、ドラゴンはそのような人々がもたらす脅威や有用性のみに基づいて、彼らの価値を計る。彼らが有する本来の価値に基づいて計るわけではないのだ。ドラゴンはそのようないかなる関り合いにおいても、権威ある位置につく。それは彼らが意識的に、もしくは意図的にそういう選択をなすからではない。少なくともドラゴンに関する限り、この世界がそうなっているからだ。
     ドラゴンが同じ態度を他のドラゴンに適用すると、事態はいよいよ複雑になる。クロマティック・ドラゴンは次のように確信している。すなわち、すべてのドラゴンはその他のいかなるクリーチャーよりも優れている。クロマティック・ドラゴンはクロマティックでないドラゴンよりも優れている。自分の種類はその他の種類のクロマティック・ドラゴンよりも優れている。そして、通常は、それぞれのクロマティック・ドラゴンの個体は自分の種類のその他のすべてのドラゴンよりも優れている。自分より年長のドラゴンは自分より強力であると彼らは認めているが、自分がその年齢になればより強力になると彼らは確信している。世界は自分を中心に回っていると、クロマティック・ドラゴンは文字通り確信しているという話は、それほど現実離れした話ではない。強欲や野心ではなく、この生来の傲慢こそが、獲物、縄張り、魔法のアイテムに対するドラゴン対ドラゴンの抗争に繋がっているのだ。家族や、たまに共同体で、ドラゴンがグループを組んで協力しあう時でさえ、それぞれのドラゴンが、自分がすべてを仕切るべきであると感じている。ドラゴンはより大きな利益のためにそのような衝動を一時的に抑えることができるかもしれないが、それにもかかわらず、そのような衝動はドラゴンの心の底に存在し続けるのだ。
     悪でないクロマティック・ドラゴンのなかには、反対の意味で傲慢な者が僅かにいる。そのような者は人型クリーチャーを、利用すべき獣ではなく、守り導くべき憐れで無防備な子供(もしくはペット)とみなしている。そのようなドラゴンは他のドラゴンに比べると、人型クリーチャーの共同体に物理的な危害をあまり加えないが、だからといって対処するのが簡単だということにはならない。彼らは恩着せがましく話し、自身が選んだ被保護者にとって何が最善かを自分は知っていると決めつけている。それらの人々自身がどう考えているかなどまったく関係ない。そのようなドラゴンは最善でも息苦しく、最悪なら独裁的だ。こうするのがお前たちのためなのだと称して共同体を一方的に支配するのである。


    衝動

     人型クリーチャーの衝動(たとえば快適さや仲間を必要とすることなど)は、ドラゴンにはない。ドラゴンと人型クリーチャーの両方にとって一般的な、生活における基礎的な衝動(食べ物、避難所、繁殖)でさえ、ドラゴンと人型クリーチャーでは異なる形態を取る。
     ドラゴンは長距離を移動する狩人だ。1回の食事のために何十マイルも移動することができるし、そうすることを厭わない。従って、ヒューマンは食べ物や水を手軽に手に入れることができる場所の周囲に他者とともに集まる必要があるのに対して、ドラゴンにはそのような必要性がない。それに加えて、人型クリーチャーは数を揃えることによって安全を求めるのに対し、ドラゴンは孤立している時が最も安全であると感じている。


    宝の山

     ドラゴンの態度で最も有名なのは強欲だ。傲慢よりも有名である。最も友好的な善のドラゴンでさえ、最もけちなヒューマンの守銭奴と同じくらい強欲だ。ドラゴンの宝の山は伝説である。うずたかく積み上げられた金貨、きらきらと光る宝石、魔法のアイテム。人型クリーチャーの共同体を丸ごと売ったり買ったりできるだけの富。だがドラゴンがそのような富で何かをすることは滅多にない。彼らは使うために集めるのではないのだ。所有するために集めるのである。
     クロマティック・ドラゴンが宝の山を築きたいという欲求は心理学的な衝動だ。議論の余地はあるが、生物学的な衝動でさえある。ヒューマンが仲間や避難所を必要とするのに勝るとも劣らない衝動なのだ。認識可能な、実用的な理由はない。目的もない。目標もない。隠者になりたがるヒューマンがたまにいるように、宝の山を築きたいという衝動と戦うドラゴンもたまにいるかもしれないが、この衝動はこの種族全体が屈している特性なのである。
     この衝動がどこからやって来るのかを明確に知っている者は1人もいない。この特性を分析するくらい物好きなドラゴンは、この特性はティアマトがこの種族に与えたものか(彼女自身の強欲の反映)、もしくは自然に発生したものだと考えている。おそらく最初期のドラゴンは、番いになりたいと考えている者に対して、自身の宝の山で印象づけていたのだろう。そうして最大の宝の山を所有するドラゴンが、自身の態度と本能をその子供に伝えたのだ。ドラゴンは、なぜ自分はブレス・ウェポンを有しているのか、なぜ自分には翼があるのかを気にしていないのと同様に、自身の強欲の起源についても気にしていない。彼らはそれが自然な姿であると受け入れているのである。


    社会規範と圧力の欠如

     ドラゴンの心理学の比較的重要でない(それにもかかわらず、このクリーチャーを理解するには重要な)側面の1つとして、社会圧力がほぼ完全に欠如している点が挙げられる。あらゆる点において、人型クリーチャーの文明は社会規範によって形成されている。法と禁忌、伝統と信仰、これらすべてはおおむね社会が形成したものだ。ヒューマンが懲罰を恐れて隣人から財産を盗むのをやめたなら、あるいはドワーフが報復を避けるためにライバル氏族のメンバーの殺害をやめたなら、社会制約が機能していることになる。結婚という概念、性的関係が容認される時間帯に関する規則、礼儀正しさ、経済取引、労働観..これらすべての風習は(さらにはそれら以外も)社会規則によって形成され、定義されている。


    忍耐と長期的な視野

     何千年も経過したと言うだけなら簡単だが、ドラゴンの寿命の長さが意味する真の重要性を取り扱うにはある程度の考慮が必要だ。何千年。平均的なドラゴンは大部分の国やたくさんの宗教よりも長生きすることが期待できる。
     換言すれば、ドラゴンには時間がたっぷりある。
     緊急時には、ドラゴンは速やかに反応することができる。とっさに判断を下し、喫緊の必要に対処する。だがそのような緊急時を除けば、ドラゴンは瞬間を捕らえたいとは思っていないし、実際にそのようなことはしない。最も簡単な決断を下す時でさえ、ドラゴンは時間をかけてじっくりと考える。可能性のある影響を検討し、可能性のあるすべての選択肢を熟考するのだ。


    捕食本能

     思考過程という意味で、ドラゴンとヒューマンの、まさに最大の相違点の1つはおそらくこうだ。すなわちドラゴンは捕食者である。ドラゴンは賢者になるかもしれない。司祭になるかもしれない。芸術の鑑定家になるかもしれない。財宝の収集家になるかもしれない。野心的な政治家にすらなるかもしれない。だがそれらは二次的な識別子にすぎない。ドラゴンは狩人なのだ。他にも興味があるかもしれないが。たまたま狩りをする収集家や指導者などではないのである。会話や知性といったような要因を除けば、ドラゴンはヒューマンよりも、狼、虎、蛇に似ている。


    社会

     ドラゴンの社会を簡潔に書くとこうなる:基本的に、そんなものは存在しない。
     歴史全体を通してそこここに例外が散見された。たまにドラゴンは独自の社会を作ろうとしたのだ。もしくは、他者の文化に入り込もうとした。しかしながら、だいたいにおいて、ドラゴンは孤立する性質と縄張りを作る性質があるため、社会的な絆を避ける。
     大部分の状況において、クロマティック・ドラゴンのなかで社会と認められるものは、“珍事”と呼ぶのが最も相応しい。いわゆるドラゴンの社会とは、より大規模な脅威に対して僅かばかりのドラゴンがたまたま協力する、たまたま共有する宗教的な習慣に固執する、興味や縄張りが重なったドラゴン同士の関り合いを司る曖昧で非効率的な伝統をたまたま遵守する、ことに他ならない。


    ドラゴン同士の関り合い

     クロマティック・ドラゴンがお互い同士で関り合う場合、片方がもう片方の縄張りに侵入するか、複数のドラゴンが同一の目標(たとえばことさら良い場所にある住処、価値あるアイテム、ティアマトの聖遺物など)に目を向けるかした時に、出会いが発生する。ドラゴンの縄張りは、自身の住処から1日飛行して辿りつくことができるすべての土地に広がっていると、賢者は見積もっている。原則はそうだが、それより遥かに狭い縄張りの領有を主張するドラゴンもいるかもしれない。たとえば自身の住処に比較的近い場所に狩り場がたくさんあるから、とか。逆に、遥かに広い土地の領有を主張する者もいるかもしれない。良い狩り場の近くに住処を作る、もしくは見つけることができないから。もしくは高慢で強欲だから。



    言語

     この世界原住の生きている種族のなかで最も古いものの1つであるドラゴンは、定命の存在の言語のなかで最も古いものの1つを話す。定命の諸種族が神々を見た時、いずれも自身の形状と振る舞いに応じた独特の方法で神界語を聞いた。かくしてこの世界の基礎諸言語が興った。そのなかに竜語も含まれている。
     竜語の文字であるイオカリック文字を創ったのはイオであるため、彼の定命の子供たちはこの世界に対する自身の印象を記録することができた。彼は彼らがこの世界を受け継ぐことを期待した。竜語もイオカリック文字も、現代に至ってなお存続している。


    名前

     ドラゴンには単に口にするだけで恐怖を生み出すことができる、印象的で恐ろしい名前の長い歴史がある。ドラゴンの名前それ自体に力があるわけではない。その名前に関連するドラゴンがあまりにも恐ろしいため、そのドラゴンの偉業を知っている聞き手は皆、連想恐怖に打たれるかもしれないというわけだ。アンデッド・ドラゴンであるドラゴサの偉業を聞いた者は身震いする。自身の心臓をデーモンで置き換えたドラゴン・アシャーダロンを知れば驚いて絶叫する。カイアン・ブラッドベインを忘れた者などいない。クリンの世界にある太古のエルフの国シルヴァネスティをほとんど滅ぼしかけたカイアンを。
     ドラゴンの名前は単に恐怖を呼び起こすだけではない。武勇の夢も鼓舞することができる。勇敢な騎士、強力なウィザード、幸運な(もしくは狡猾な)一般人にやっつけられたドラゴンの名前が、莫大な数の神話、伝説、英雄の物語に登場している。本質的に、名前をつけられたドラゴンは注意を引く。世界中の人々がドラゴンの行動、計画、さらには夢さえも感じている。羊を襲うオーシルという名前のワームリングから、転生前の魂を食べる強大なアシャーダロンまで、ドラゴンの名前は注意を引く。そのような名前はこの世界固有の魔法を体現していると考えている者がたくさんいるのだ。


    宗教

     すべてのドラゴンはイオを知っている。イオは自身のイメージから定命のドラゴンを生み出した。ドラゴンはまた、イオがその後間もなく死んだことも知っている。その他の神々は、天地創造に続いて発生したプライモーディアルと神々の戦争中に協力しあったが、イオには手を貸さなかったため、自身の子供であるドラゴンによる支援を除けば、イオは単独で戦わざるをえなかったのだ、とドラゴンは確信している。


    イオの死

     その戦争中に、1世紀におよぶ抗争によって半ば粉砕された、この世界のとある大陸の上で、“恐怖の王”イーレックハースと呼ばれている恐ろしいプライモーディアルがイオと対峙した。プライモーディアルが鍛え上げた、山と同じサイズのアダマンティンの斧で、“恐怖の王”はイオを頭から尾まで真っ二つにした。
     イーレックハースは笑った。彼の歓声は雷になり、この世界全域に鳴り響いた。だが彼の笑い声が消え去る間もなく、2つになったイオから解き放たれた神の力が、イオの最年長の2体の子供に入った。彼らはドラゴンから神になった。


    ドラゴンの神々の誕生

     片方の神だけではなし得なかったことも、2柱が協力すればなし得た。2柱の新たな神(バハムートとティアマト)は協力して“恐怖の王”と戦い、彼を殺害した。バハムートは“王”の斧を星空に放り投げた。
     神の力が注入されたことによってバハムートとティアマトが得たのは神の強さだけではなかった。イオの性質も2つに分かれたのだ。森羅万象を守りたいという彼の望みと彼の公正感はバハムートに根付いた。今やバハムートは正義、名誉、守護の神として崇拝されている。ティアマトはイオの不遜、傲慢、強欲を体現し、強欲と嫉妬の神として崇められるようになった。


    クロマティック・ドラゴンの詳細



    グリーン・ドラゴン

     グリーン・ドラゴンほど、人型クリーチャーから完全に罵られているドラゴンはほとんどいない。グリーン・ドラゴンはフォレスト・ドラゴン(森竜)とも呼ばれている。グリーン・ドラゴンは、一部のクロマティック・ドラゴンほど強力でもなければ破壊的でもないかもしれないが、彼らは生来、そして本能的に、嘘吐きだ。彼らは息を吐くように嘘を吐く。そしてそれが上手だ。彼らは陰謀を好んでいる。そして目的を達成するのに、策略と二枚舌を用いて行なうのを、他のいかなる手段を用いて行なうよりも好んでいる。どんな獣でも狩りはできるが、獲物をだまして自ら進んで夕食になるように仕向けるには技能と知性が要求される。グリーン・ドラゴンの好戦的な性質(グリーン・ドラゴンにとって、弱いクリーチャーは獲物か駒のいずれかだ。そしてほとんどすべてのクリーチャーは弱い)にこの態度を加えることにより、グリーン・ドラゴンは嫌らしい獣になる。


    住処と地形

     グリーン・ドラゴンは植物が密生した地域を好んでいる。彼らは森以外の土地や蒸し暑いジャングルよりも、温暖な森や寒冷な森の方をずっとずっと好んでいる。彼らは大きくて印象的な木が生えている森をことさら好んでいる。より古く、より太ければ、なお良い。グリーン・ドラゴンは比較的小さい森、ジャングル、植物が一面に生い茂った沼地も、あまり望ましくない代案として受け入れるかもしれない。適切な森が見つけられないグリーン・ドラゴンは、起伏に富む丘陵などの地域に定住するかもしれない。その場合は、より幸運な親戚が森の木々を使用しているのと同様に、斜面や渓谷を遮蔽や視認困難に使用する。


    好む財宝

     グリーン・ドラゴンはどんな財宝でも欲しがるが、手作りのアイテムをことさら好んでいる。たとえば彫刻、芸術品、装飾を凝らしたソード、魔法の鎧など。彼らは自分以外の誰かが大変な労力を費やした物なら何でも所有したいと思っている。ドラゴンが誰かに芸術作品の作成を強制することはないかもしれないが、最終的に職人の創造的な労働から利益が得られるならそれで満足する。


    ライフサイクル

     グリーン・ドラゴンは受精してから約4ヶ月後に卵を生む。孵化期間は16ヶ月だ。“一孵りの兄弟姉妹” は3.5個の卵からなる。理想的な状況では平均して2.4個が孵化する。
     ワームリング段階は約6年持続する。グリーン・ドラゴンは160歳前後でアダルトに到達し、950歳以降にエルダーになる。真のエインシャント・グリーン・ドラゴンは1,750年以上生きた者を指す。但し1世紀程度の増減はある。一般に知られている最年長のグリーン・ドラゴンは約2,250年生きた。


    身体的特徴

     グリーン・ドラゴンの鱗はさまざまな色合いをしているため、葉に容易に溶け込むことができる。グリーン・ドラゴンは自身の鱗に傷をつけたり黒ずませたり、時には苔を生やしたりしてこの能力を強化している。ブラック・ドラゴンと同様に、グリーン・ドラゴンも自身の目立つ角を武器として使用しない。代わりに彼らは自身の鼻についたとげを、植物が一面に生えた自身の領域内を移動する際に葉や枝を押しのけるのに主として使用している。グリーン・ドラゴンの頭に冠状についている角は、鼻についたとげで障害物を押しのける際に、それが跳ね返って顔に当たったり視界を遮ったりするのを防いでいる。



    グレイ・ドラゴン

     ある意味、グレイ・ドラゴン(灰色竜)はすべてのクロマティック・ドラゴンのなかで最も謎めいている。独特の色合いを欠いている彼らは石だらけの辺境地域の狩人であり、大空を永遠に飛翔している。ファング・ドラゴン(牙竜、獰猛だから)、ストーン・ドラゴン(石竜、獲物を石化させる能力故)、スパイク・ドラゴン(とげ竜、着脱可能なとげがついているから)とも呼ばれているこれらの獣は、他のクロマティック・ドラゴンの最悪の性質を有している。
     グレイ・ドラゴンは狩りそのものを、それによって得られるものに負けず劣らず楽しんでいる。獲物に忍び寄ることに対する彼らの動物的な過度の執着は、彼らを特徴づける性質かもしれない。


    住処と地形

     グレイ・ドラゴンは不毛の地、低木地、乾燥した草原、その他の見通しの良い地形を好んでいる。目に見える障害物がある地形はあまり好んでいない。彼らは巨大な猛禽の如く、高い上昇気流に乗り、周囲何マイルにも渡って、獲物になりそうなものを探すのを好んでいる。グレイ・ドラゴンは平原の彼方で発生する、最も小さい動きも見ることができる。そうして遥か彼方に、何か調べたいものが見つかったなら、そこへ辿りつくために何時間にも渡って、上昇気流から上昇気流へ飛び回るかもしれない。


    好む財宝

     グレイ・ドラゴンは、特定の種類の財宝をことさら好むということはない。彼らの典型的な宝の山は、過去に狩った犠牲者から奪ったアイテムからなる。栄えある成功を記念する戦利品なのだ。他のドラゴンに比べれば、グレイ・ドラゴンは財宝を財宝としてあまり評価しないが、それにもかかわらず、自身の財宝はがっちりと守る。


    ライフサイクル

     グレイ・ドラゴンは受精してから約4ヶ月後に卵を生む。孵化期間は合計で20ヶ月だ。“一孵りの兄弟姉妹” は1.2個の卵からなる。理想的な状況では全部孵化する。
     グレイ・ドラゴンはおおむね10歳になるまでワームリングであり、200歳くらいになるまでヤングである。900年くらいでエルダーになり、1,400年くらいでエインシャントになる。グレイ・ドラゴンが到達したことが確認されている最年長は約2,100歳だ。


    身体的特徴

     グレイ・ドラゴンの鱗と四肢には石のようなとげが生えている。グレイ・ドラゴンのとげは取り外すことができ、適切な攻撃を行なえば、獲物にしようと考えている者を地面に釘付けにすることができる。
     グレイ・ドラゴンの鱗は石灰岩の白から花崗岩の灰色までさまざまだ。このドラゴンが好む地形では優れたカモフラージュになっている。このドラゴンが飛行すると、地上から見れば、比較的明るい色合いの下腹部が雲や空に溶け込む。
     グレイ・ドラゴンの口は異様に大きく、牙がびっしりと生えている。牙の一部は長すぎるため、このドラゴンは口を完全に閉じることができない。下顎からは、牙に似た角がたくさん生えている。それらの角のおかげで、このドラゴンは石化した犠牲者の外側を破壊し、柔らかい内部を手に入れることができる。
     グレイ・ドラゴンは太陽光で暖まった石の強い匂いと、遥か昔に死んだ動物の腐肉のかすかな匂いを発している。



    パープル・ドラゴン

     パープル・ドラゴンはディープ・ドラゴン(地底竜)とも呼ばれている。クロマティック・ドラゴン族のなかでは、おそらく最も一般に知られていない種類だ。地上に住むクリーチャーの大部分はパープル・ドラゴンが存在していることすら知らない。パープル・ドラゴンについて聞いたことがある者のなかには、そのような物語を神話や勘違いで片付ける者がたくさんいる。だってそうだろう?大地の下にある暗闇の中で、ドラゴンの鱗の色が黒じゃなくて紫だとどうしてわかるのかね?   ブラック・ドラゴンが地下深くに住むことは滅多にない。探検家が地下深く潜れば潜るほど、ブラック・ドラゴンに遭遇する確率よりパープル・ドラゴンに遭遇する確率の方がどんどん高くなっていく。大地の地下深くにある空洞の中に永住している人々は、パープル・ドラゴンが完全に現実の存在であり、極めて恐ろしい脅威であることを知っている。


    住処と地形

     パープル・ドラゴンは洞窟、地下室、その他のアンダーダーク地域に住んでいる。要するに太陽光が届かない場所だ。なにしろ太陽光は彼らを害するから。彼らは岩や土を通して伝わる遠方の音を聞くことができる。地下では音が歪むが、ディープ・ドラゴンはそのような環境に慣れているため、広大な洞窟の反対側の壁を這い上る竈馬の音すらはっきりと聞き取ることができる。  パープル・ドラゴンが大地の底深くにある隠れ場所の外に出ることは絶対にない。但し例外として、たまにシャドウフェルへ行く。ディープ・ドラゴンのなかにはこの日の差さない領域に住む者もいる。なかでも特に、“この世界”の洞窟とシャドウフェルの地域の間に亀裂があるところに。


    好む財宝

     パープル・ドラゴンは他のいかなるドラゴンにも負けず劣らず富を好んでいるが、彼らが特に好んでいるアイテムは稀少な地図と地図作成者用の道具類だ。なかでも特に、魔法で強化された道具。パープル・ドラゴンはまた、暖かい地域の効果に持ちこたえることができるようなアイテムも高く評価している。彼らがアンダーダークの地下深くへ潜れば潜るほど、そのような地域と遭遇する可能性が高くなるから。


    ライフサイクル

     パープル・ドラゴンの卵は約25ヶ月で孵化する。そのうち最初の8ヶ月は女性のドラゴンの体内で過ごす。平均的な“一孵りの兄弟姉妹” は約6個の卵からなる。そのうち約半数の卵が健康なワームリングに孵化する。パープル・ドラゴンは自律行動能力がある霊が縛り付けられている地域に卵を生むかもしれない。そのような霊は成長するワームリングに、自身が有するシャドウフェル由来の死霊術の共鳴を与えるかもしれない。


    身体的特徴

     パープル・ドラゴンの胴体は長く、極めて柔軟だ。猫や蛇のように。翼が後退翼構造をしており、頭部が先細で滑らかなため、狭い地下トンネルも這い進むことができる。  パープル・ドラゴンは蛇のような麝香のような匂いがする。



    ブラウン・ドラゴン

     ブラウン・ドラゴン(茶色竜)は砂漠の墓から盗んだ財宝が満ちた、砂に覆われた住処の快適さを大いに楽しんでいる。ブラウン・ドラゴンはまた、遥かなる土地から誘拐して来た、生きているエキゾチックな食べ物も好んでいる。  ブラウン・ドラゴンと直接対峙するには、ドラゴン殺しになりたがっている者の側で追加の仕事が必要になる。ブラウン・ドラゴンは自身を最も危険に晒さないようなやり方で、自身の目標を達成する。より正確にいえば、最も努力を必要としないやり方で。たとえば、男爵の馬を食べるために武装した城を攻撃するのと、バッファローの群れからはぐれた1頭の雄に急降下するのと、2つの選択肢が示されたなら、ブラウン・ドラゴンは後者を選択する。


    住処と地形

     ブラウン・ドラゴンは乾燥した土地や人気のない土地を好む。人型クリーチャーの社会が繁栄している可能性が低い場所だ。そうすれば、そのようなものに悩まされずに済むから。ブラウン・ドラゴンは砂漠の地下に住処を作る。古い遺跡に支えられた空洞の中とか、埋まった洞窟の入り口の中とか。あるいは、砂漠の地上部分にある大きな建物の廃墟に住むブラウン・ドラゴンもいるかもしれない。たとえば遥か昔に略奪された巨大な墓とか。


    好む財宝

     ブラウン・ドラゴンは財宝と同じくらい食べ物を欲しがる。おまけに彼らが好む財宝は食器だ。銀のティー・セットから、かつては神々が使用していた水晶のデカンターまで。ブラウン・ドラゴンは大変な価値がある、もしくは著名人が昔所有していた高級食器を手に入れる衝動に抗えない。彼らはそのような財宝を購入するために仲介人を雇用すらするかもしれない。


    ライフサイクル

     ブラウン・ドラゴンの卵の孵化期間は約14ヶ月。最初の5ヶ月は母親の体内で過ごす。“一孵りの兄弟姉妹” は5.6個の卵からなる。理想的な状況では、平均して3個が孵化する。  ブラウン・ドラゴンのワームリング段階は約8年持続する。ヤングがアダルトになるのは130歳前後。エルダーになるのは600歳を過ぎてから。真のエインシャント・ブラウン・ドラゴンは1,250年以上生きた者を指す。但し1.2世紀の増減はある。一般に知られている最年長のブラウン・ドラゴンは約2,000年生きた。


    身体的特徴

     ブラウン・ドラゴンの鱗はさまざまな色合いを帯びているため、その地形の砂に溶け込むことができる。グリーン・ドラゴンと同様に、ブラウン・ドラゴンも砂の中にある岩や土に見せかけるために、自身の鱗に傷をつけたり黒ずませたりするかもしれない。



    ブラック・ドラゴン

     スカル・ドラゴン(髑髏竜、その頭部の一般的な形状故)もしくはスワンプ・ドラゴン(沼竜)とも呼ばれているブラック・ドラゴンはおそらく最も悪意に満ちたクロマティック・ドラゴンだ。レッドの方が気性が荒いかもしれない。欺きと支配に関してはグリーンの方が野心家かもしれない。だがブラック・ドラゴンほど残酷なドラゴンは他にほとんどいない。ブラック・ドラゴンは単に生き延びるために、もしくは自身の縄張りを守るために狩りをするわけではない。苦痛をもたらすという純然たる楽しみのためにそうするのだ。彼らは獲物が無防備だろうと危険だろうと、弱かろうと強かろうと気にしない。暴力が満足をもたらすのである。


    住処と地形

     ブラック・ドラゴンは沼を好んでいる。深くて黒い水、太い木、悪臭を放つ植物があるならどこでも良い。そのような場所なら、彼らは戦闘で優位が得られる。なぜなら、沼なら普通にある植物や腐敗の匂いが、ドラゴンの存在を示す酸の匂いをごまかしてくれるから。そのようなドラゴンの目的に適うのは、ドラゴンが潜れるくらい深い沼だけであるため、浅い沼にブラック・ドラゴンの住処があることは滅多にない。


    好む財宝

     ブラック・ドラゴンは貨幣を、その他の種類の財宝よりも好んでいる。なぜなら貨幣は長期間水中にあっても毀損しないから。絵画や彫刻はそうはいかない。貨幣は黒ずむが、その他の金属と違って錆びたりはしない。宝石の方がもちが良いかもしれないが、ブラック・ドラゴンの宝の山では宝石より貨幣の方が多い。可能性のある理由の1つとして、貨幣は天然の産出品というより、どう見ても人工で作られた物である点が挙げられる。そのため貨幣はその(かつての)所有者にとって、宝石よりも本質的に価値があったはずだと、ブラック・ドラゴンはみなしているのだ。


    ライフサイクル

     ブラック・ドラゴンの卵の孵化期間は約16ヶ月。そのうち12ヶ月を女性の体外で過ごす。典型的な“一孵りの兄弟姉妹”は5〜10個の卵からなる。理想的な状況では、約半数の卵が孵化する。  ブラック・ドラゴンがワームリングでいる期間は約4年。アダルトに到達するのは約125年。900歳くらいでエルダーになる。エインシャントになるのは約1,600年。2,200歳までには逝去する。


    身体的特徴

     ブラック・ドラゴンは他のクロマティック・ドラゴンに比べると異常なほど痩せている。針金のようだが、骨と皮というほどではない。前方に突き出している角はやばそうに見えるが、攻撃的に使用することはできない。単に頭部を守っているだけなのだ。頭部が髑髏に似ていることで悪名高いが、目が窪んでいるのもそれに寄与している。



    ブルー・ドラゴン

     ブルー・ドラゴンはストーム・ドラゴン(嵐竜)とも呼ばれている。ドラゴンはそもそも傲慢な種族だが、そのなかで最も尊大で虚栄心が強い種類の一角を占めている。彼らは自身の力を行使する時、戦闘に参加する時、人型クリーチャーやその他の下級クリーチャーに対して尊大ぶる時に大きな喜びを感じる。自分にはそれができることを証明したがっているのだ。結果に対して何らかの真の欲求があるわけではないのである。ブルー・ドラゴンは侮辱を許すかもしれないが、自分は弱い、もしくは劣っていると仄めかされた場合は必ず激怒をもって反応する。  ブルー・ドラゴンはまた、縄張り意識が極端に強いドラゴンでもある。彼らが侵入者に対して、たとえ偶然侵入した者であっても、事情を説明する機会を与えることは滅多にない。ブルー・ドラゴンは境界線の侵害を理由として強力な敵やその他のドラゴンと戦う可能性が、クロマティック・ドラゴンの他の種類よりも高い。この性質はことさら厄介な問題になりうる。なぜならブルー・ドラゴンはまた、自身の環境に関して、その他の親戚よりもずっと気難しいから。


    住処と地形

     賢者(と『モンスター・マニュアル』)によれば、ブルー・ドラゴンは沿岸地域を好んでいる。より正確にいえば、ブルー・ドラゴンは激しい嵐が頻繁に訪れる地域を好んでいる。沿岸地域と海沿いの断崖はこの説明に合うが、熱帯の島の一部や、逆巻く海からそう遠くないところにある山がちな高地もまた然り。


    好む財宝

     ブルー・ドラゴンは見目麗しい財宝を好む。ブルー・ドラゴンは宝石を好んでいる。なかでも特に、サファイアやその他の青い石を。彼らは美しい芸術作品や装身具も同様に高く評価している。ブルー・ドラゴンの生来の強欲を鑑みれば、そのような出来事は稀だが、ブルー・ドラゴンは気に入らない財宝を残して立ち去ることが一般に知られている。そのような財宝があると、自身の宝の山の荘厳さ(つまり自身の荘厳さ)が損なわれると考えているのだ。


    ライフサイクル

     ブルー・ドラゴンの卵は約20ヶ月で孵化する。後半の15ヶ月を巣の中で過ごす。平均的な“一孵りの兄弟姉妹” は2.4個の卵からなる。大部分の卵が孵化して健康なワームリングになる。  ブルー・ドラゴンがワームリングからヤングになるのに要する期間は約7年。160歳くらいでアダルトになる。約1,000年後にエルダーになり、約1,800年でエインシャントになる。一般に知られている最年長のブルー・ドラゴンは約2,300歳で死亡した。


    身体的特徴

     ブルー・ドラゴンの鱗はその他のクロマティック・ドラゴンの鱗より若干反射率が高い。ブルー・ドラゴンの鱗を鏡として使用することはできないが、青い環境や暗い環境なら、周囲の色合いが鱗に映り込んだり、鱗が大空や周囲の環境に溶け込んだりする。  ブルー・ドラゴンの角と眉弓が、雨水やその他の降水が目に流れ込むのを防いでいる。この特徴と鋭い視覚を組み合わせることにより、ブルー・ドラゴンは荒天の中でも大部分のクリーチャーよりものを良く見ることができる。



    6月19日更新 New!


    ホワイト・ドラゴン

     ホワイト・ドラゴンはアイス・ドラゴン(氷竜)もしくはグレイシャル・ワーム(氷河竜)とも呼ばれている。彼らは愚かなクリーチャーであるという評判を得ているが、そうではない。ホワイト・ドラゴンはことさら獣じみているが、他のクロマティック・ドラゴンと同じくらい知的だ。彼らは複雑な陰謀や政治的な権力にほとんど興味がなく、狩人や財宝コレクターとして暮らすのを好んでいる。彼らは知性よりも本能により依存している。それでも彼らは長命だし、遥かなる未来を見据えるが、親戚に比べれば、さほど未来を気にかけていない。快適に食べ、快適に暮らせればそれで良いのだ。
     有能な捕食者は皆そうであるように、ホワイト・ドラゴンも自身の縄張りに精通している。彼らは良い隠れ場所と最高の待ち伏せ場所を把握している。彼らは上手に狩るのみならず、獰猛に狩る。彼らは速やかに、効率的に殺害する。彼らはブラック・ドラゴンの残酷さやレッド・ドラゴンの獰猛さを欠いている。また、それらのドラゴンは侵入者や隣人に喧嘩を売ったり操作したりする傾向があるが、ホワイト・ドラゴンはそれも欠いている。今まさに犠牲者にならんとしている者が自身を殺害すべきでない確実な理由を速やかに提示するのでない限り、ホワイト・ドラゴンはまず最初に殺害し、次に食べ、質問を尋ねるなど考えもしない可能性が高い。口が達者な旅人が何らかの提案をしたら命が助かったというような、一般に知られている話は僅かしかないが、たとえば宝石を贈りつつ、さらなる宝石を約束するというものがある。あるいは、こちらの方がなお良いのだが、肉を贈りつつ、その旅人を食べて得られるより多い肉を約束するというものがある。


    住処と地形

     ホワイト・ドラゴンは冷気を真に好んでいる。彼らの大半は年間を通して冠雪した山頂、ツンドラ、氷原のいずれかに住んでいる。氷の地形によって獲物の移動速度が落ちることにより、ホワイト・ドラゴンはことさら利益を得ている。なぜならドラゴン自身の移動速度は落ちないから。


    好む財宝

     ホワイト・ドラゴンは氷のようにきらきら輝く財宝を好んでいる。なかでも特にダイアモンドや、その他の淡い色合いの宝石を。ぴかぴかに磨き上げたプラチナや銀でも良い。鏡や鏡のように磨き上げた表面に関連する芸術品でも良い。


    ライフサイクル

     ホワイト・ドラゴンの卵の孵化期間は約14ヶ月。そのうち最初の3.5ヶ月は女性の体内で過ごす。“一孵りの兄弟姉妹” は8〜10個の卵からなるが、孵化するのはそのうち4分の1から3分の1だけだ。
     ホワイト・ドラゴンのワームリング段階は3〜4年続く。ヤング段階は100歳に至るまで続く。アダルト・ドラゴンがエルダーになるのは約750歳。エルダーがエインシャントになるのは約1,700歳。ホワイト・ドラゴンは最大で2,100歳まで生きることが一般に知られている。


    身体的特徴

     ホワイト・ドラゴンは最も小さいクロマティック・ドラゴンだ。ブラック・ドラゴンより僅かに小さいだけではあるが。彼らの鱗は大きく、四肢は太いため、彼らは鈍そうに見えるが、実際には他のドラゴンと同じくらい素早く器用に動く。ホワイト・ドラゴンの鱗の色は純白、灰色、薄青とさまざまだが、氷や雪の地形では優れたカモフラージュになる。



    レッド・ドラゴン

     伝説、お伽話、寓話に登場するドラゴンの色が指定されていない場合――そのような物語に登場するのが廃墟と化した王国、生け贄に捧げられた純潔の乙女、黒焦げの死体となって故郷に送り届けられた勇敢な英雄の場合――そのような物語に登場するのは強力なレッド・ドラゴンである可能性が高い。フレイム・ドラゴン(炎竜)、ファイアー・ワーム(火竜)、マウンテン・ドラゴン(山竜)とも呼ばれているこれらの恐ろしい獣は伝統的なドラゴンの特徴の典型である。すべてのドラゴンは捕食者だが、最も貪欲なのはレッド・ドラゴンだ。必要な量を遥かに超えて食べるのである。すべてのドラゴンは強欲だが、レッド・ドラゴンは話にならないくらい強欲だ。なにしろ彼らは、すべての富はそれを手に入れることができるくらい強い者に帰属すると完全に確信しているから。そしてどれだけの富を手に入れようとも、もうそれで十分などということは決してないのだ。すべてのドラゴンは尊大だが、レッド・ドラゴンは極めつけに傲慢だ。彼らは自身のことを完成された最高峰のドラゴンとみなしている。
     レッド・ドラゴンは最も些細な侮辱も絶対に許さない。彼らは縄張りに侵入した者を殺害し、自身の宝の山からほんの些細な物を盗んだ者を殺害し、もしくは単に殺したいから殺害する。これらの偉大な獣はどこでも、どんな手段を用いても、満足を手に入れる。自身を怒らせた者を殺害することができないレッド・ドラゴンは激怒し、近隣のあらゆる共同体に破壊をもたらすだろう。レッド・ドラゴンの伝説的な怒りを癒すことができるのは莫大な量の金銭的な貢ぎ物だけだ。そしてそのような怒りを冷ますことができるのは血だけなのである。
     とはいえ、レッド・ドラゴンは何も考えずに暴力を振るっているわけではない。熟達した戦略家である彼らは、およそ考えうるあらゆる戦闘シナリオで使用する莫大な数の戦術を練るのに時間を費やしている。彼らはより強力な敵を攻撃する危険性を認識している。そのような敵は稀かもしれないが。彼らは勝てそうもない時には撤退するが、それによって彼らのプライドは完膚なきまでに打ち砕かれる。
     レッド・ドラゴンの縄張りと境を接している人型クリーチャーの共同体は、財宝や美味しい青少年という形の貢ぎ物を頻繁に提供することにより、その獣の怒りを未然に防ぐことができることがある。レッド・ドラゴンのなかには下級のクリーチャーからなる共同体を支配して楽しんでいる者もいるが、陰謀を用いて密かにそれを行なうグリーン・ドラゴンと異なり、レッド・ドラゴンは服従を要求し、従わないすべての者を虐殺する。レッド・ドラゴンは自身の縄張り以外の世界に関するニュースにも興味がある。その理由の1つとして、そうすることにより、他のレッド・ドラゴンと比較して自身の地位がどうであるかを知ることができる点が挙げられる。彼らは人型クリーチャーの家や家族を脅かすことにより、そのクリーチャーを無理矢理荒野へ派遣してニュースを手に入れさせるかもしれない。そのような気の進まない伝令の大部分は帰還する前に死ぬが、そうなってもレッド・ドラゴンは良心の呵責をまったく感じない。人型クリーチャーは再生可能な資源なのだから。
     大部分のドラゴンと同様に、レッド・ドラゴンもほとんど何でも食い繋ぐことができるが、やはり肉を好んでいる。しかしながら、他のどの種類のドラゴンよりも、レッド・ドラゴンは肉以外のあらゆる物を食べるのを嫌がっている。植物や無機物を食べるくらいならほとんど餓死しかける方を選択する者もいる。彼らはどんな動物でも食べる。人型クリーチャー、野獣、さらには他のドラゴンでさえ。若ければ若いほど良い。彼らは柔らかい肉を好んでいるため、若い人々を誘拐するドラゴンの伝説が生まれた。
     レッド・ドラゴンは地上でも空中でも同じくらい上手に戦う。彼らは自身の優れた力を見せる機会として近接戦闘を楽しんでいる。しかしながら、必要であれば、レッド・ドラゴンがブレス・ウェポンの使用を躊躇することは絶対にない。レッド・ドラゴンは、財宝や魔法のアイテムの所有者に戦闘で負けるくらいなら、そのようなアイテムを灰塵に帰す方を選ぶだろう。ドラゴンのプライドは強欲に勝るのだ。
     レッド・ドラゴンは強すぎるとみなした敵を攻撃しないかもしれないが、いったんいずれかの戦闘員が血を流したなら、レッド・ドラゴンが戦闘から撤退することは絶対にない。彼らは自信過剰なため、他のいかなる種類のクロマティック・ドラゴンよりも、レッド・ドラゴンは死ぬまで戦う。たとえ脱出が可能だったとしても。


    住処と地形

     レッド・ドラゴンが地形を選択する際の第1の選択肢は、ある程度高度があってことさら暑い場所(たとえば火山や硫黄の間欠泉など)だが、レッド・ドラゴンはそのような場所を必要としているわけではない。レッド・ドラゴンは通常の山の頂、岩がちの不毛の地、砂漠の台地に住むかもしれない。高いところに腰を落ち着けて、周囲何マイルにも渡って自身の領域を見晴らすことができる場所ならどこでも良いのだ。レッド・ドラゴンは冷気をひどく嫌っているが、他のクリーチャーより冷気に弱いわけではない。冠雪した山頂に家を作るレッド・ドラゴンさえ僅かに存在している。なぜなら彼らにとっては、気温よりも高度の方が重要だから。高度と気温を組み合わせた住処(たとえば火山の頂上とか)を誇ることができるレッド・ドラゴンは、自身は真に幸運だと考えている。


    好む財宝

     レッド・ドラゴンのお気に入りの財宝とは、自身の宝の山の中にある物全部、他のドラゴンの宝の山の中にある価値ある物全部、自身以外のすべての者が所有している価値ある物全部だ。レッド・ドラゴンは厚顔無恥で見境なく強欲であるため、財宝の取得に関して一般的な好み、習慣、パターンは存在しない。個々のレッド・ドラゴンは特定の好みを有するかもしれないが、平均的なレッド・ドラゴンは手に入れる財宝の形態に頓着しない。


    ライフサイクル

     レッド・ドラゴンは受精してから約5.5ヶ月後に卵を生む。孵化期間は22ヶ月だ。“一孵りの兄弟姉妹” は2〜4個の卵からなる。理想的な状況ではそれらがすべて孵化する。
     レッド・ドラゴンは8歳くらいになるまでワームリングであり、200歳くらいになるまでヤングである。950歳くらいでエルダー段階に到達し、1,900歳くらいでエインシャントになる。一般に知られている最年長のレッド・ドラゴンは約2,500歳に到達した。


    身体的特徴

     レッド・ドラゴンはクロマティック・ドラゴンのなかで最も大きい。彼らの翼は胴体に比べると大きいため、レッド・ドラゴンは遠距離からでも容易に識別できる。他のクロマティック・ドラゴンの鱗と異なり、レッド・ドラゴンの鱗が背景に溶け込むことは滅多にない。但し背景が燃え盛る火の場合は除く。そのように人目を引く事実を、これらの獣はまったく問題なく受け入れている。彼らは下級のクリーチャーを前にして隠れたいなどとはまったく考えていない。