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行く先は―― 暗黒の地下世界。 『DD2:暗黒洞の尖塔』 7月31日発売!

 冷たい湿った空気がダレンドの顔に吹きつけた。彼は何度か目ばたきした。すくなくとも、目ばたきしたと思った。目を開けていようと閉じていようと、見えるものはただ暗黒。どれだけ先があるか知れぬ深い深い“無”があり、空虚があるばかりだった。
 冷たい風が頬をなでて過ぎた。その風のなかの、塵と古い腐敗のにおいが鼻をついた。ふと、祖母の館の古い地下室のことが思われた。ここはあの地下室によく似ている。だが、もっと広く、もっと変っている。まったく、変ったところで目をさましたものだ……
 違う! おれは落ちたのだ! 一挙に記憶がよみがえった。驚きあわてる仲間たちの顔が目の前をかすめて過ぎ、思わず絶叫が口をついて出た。そうだ、ロープが切れたのだ、そしておれはあの忘れられた王の墓のそばの、狭い縦穴に落ちたのだ。
 どれくらい落ちたのだろう。彼は手を動かそうとした。とたんに激痛が走った。1ヶ所か2ヶ所の骨折はまちがいない。
 彼は頭を右へ、左へうち振り、「神はほむべきかな」としゃがれ声で言った。とにもかくにも命はある。ここで待っていれば、いずれ仲間たちが見つけてくれるに違いない――
 待て。
 おれはどれほどの間、この暗い地底の深みに横になっていたのだ? はっきりとは言えない、だが勘では相当の時間が過ぎたという気がする。なぜ、仲間たちはまだおれを見つけてくれていない?
 「おおい」と声を張り上げた。仲間たちは今も彼を探していて、暗闇のせいで見つけられずにいるのかもしれない。「アンゲル? ジャマーチ? おれはここだぞ!」自分の声が恐怖で震えているのがわかった。落ちつけと自分に言い聞かせ、二度、三度、深呼吸をした。
 呼び声は暗い、奥ふかい涯に木霊して消えた。これが洞窟だとしたら、さぞ大きな洞窟に違いなかった。恐怖が胸を締めつけた。おれは噂に聞く、あの広大な地下世界、アンダーダークまで落ちてしまったのだろうか。
 とつぜん、きちきちという音がした。ダレンドは首をもたげた。目をかっと見開く。もとより黒冥々のなかに何も見えはしない。  「アンゲル?」そうであってくれと思いながら、彼は呼びかけた。
 答は無い。心臓が早鐘を打った。口の中が乾いた。
 また、音がした。きちきちと、きちきちと。
 近い。
 奇妙な鳴き声。
 そして渦巻く蟲の群が彼を包みこんだ。


 かつて陽の光を知らぬ海の水が、小石の転がる岸に打ち寄せる。その彼方、青白い洞窟の光に照らされて浮かびあがるのは、広大な地下世界アンダーダークの光景である。霧ふかい彼方、いくつも立ち並ぶ、城ほどもある巨大な石柱。そして見よ、最も近い石柱のふもと、上へ行くほど傾斜が急になる広い斜面に、大石柱の石を掘りぬいてつくりあげた、道、壁、そして見事な建物のかずかず。多くの建物の壁には、うつろな窓がぽっかりと口を開けている。わずかに光を帯びてきらめく窓もある。――地下世界の尖塔都市を探検し、その奥に待つ脅威に立ち向う勇気が、君にはあるだろうか?
 『暗黒洞の尖塔』は『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の5レベル・キャラクター用シナリオである。各遭遇にはそれぞれ、ダンジョン・マスターのための戦術情報や地図が付いており、わかりやすく使いやすい書式となっている。


地下の洞窟

  光のない、暗黒の空間は、あなたの手にした光を前に引きしりぞいていきます。そこに見えてくるのは、はばの狭い、傾斜の急なトンネルで、横はばは約5フィート(つまり1.5mほど)、高さは約7フィート(つまり2m強)です。壁は緑色がかった木の柱で支えられています。空気はしめっていて、物の腐るにおいが鼻をつきます。傾斜がずっと一律だとすれば、このトンネルは北に数百ヤード(言いかえれば数百メートル)進むと地上に達するのでしょうが、南へ下ってゆくとどれだけ先があるのか、それは皆目わかりません。
 道をずっと進んでいくと、あらっぽく掘りぬいたトンネルは、ここで急に広くなって、平らなテラスのようなところに出ます。この場所の幅と奥行きはどちらも20フィート(つまり6m)、天井の高さは8から10フィート(つまり2m半から3m)といったところ。奥行きと申しましたが、奥にあるのは壁ではなく、こだまをかえす大きな空間、巨大な縦穴です。縦穴にほど近いここでは、空気の中に何やらふしぎな力のようなものがあって、まるで大嵐の前のような感じがします。縦穴は上にも下にも続いており、上にいくほど狭くなり、下にいくほど広くなっています。そしてテラスの上、崖っぷちの近くには、人型をしたものが2つ倒れていて、ぴくりとも動きません。


・・・・・・以下本編へ続く