やめろ! 村人のふりをするのは!『セイラム』


1692年といえば日本では元禄5年。
アメリカ東部はまだイギリスの植民地で、敬虔な清教徒たちが理想の地を目指して入植したのですが……その清教徒の村、セイラムで少女たちの嘘 ―― 「魔女がいる」 ―― から始まり、お互いがお互いを疑い、訴えられぬために告発し、証拠なども無しに魔術を行った罪で何人もが処刑されるといういう史上まれな集団ヒステリー事件がおこり、映画や小説、ゲームでもこの有名な事件は取り上げられることが多いのですが、

セイラム

もそんな“セイラムの魔女裁判”がテーマのボードゲームです。
因みに今や観光資源。

コンポーネントはギッシリ。


裁判の時にカードを置くための絞首刑台ボードは、裏返すと最後の得点管理ボードに。
絞首刑用の首つり縄マーカーはスタートプレイヤーマーカーみたいなもの。
こんなのついてくるのは『セイラム』くらいだ。


プレイヤーの受け取るセット。
衝立、自分の住民、告発用カード、アリバイトークン、

ゲームのキモは、各プレイヤーが受け持つ「自分の住人」の分配システム。
もう、ここだけ褒めたら、他は何も言うことなし。これがすごい。

原則、各プレイヤーは1から7番までの村人を受け取ります。

各番号は7枚あり、4枚は「村人」で、3枚は「魔女」です。

これをルールに従って分配すると、受け取った本人が確認する以外はどんな組み合わせなのか他のプレイヤーには完全にわからないようにシャッフルされるのですが、

1)受け取った1から7番までの7枚の住人には、必ず3人、魔女がいる。
2)他のプレイヤーとは必ず1つだけ、番号の共通する魔女がいる(!)

     

これ、すごい!!
プレイヤーだけでこの組み合わせをシャッフルできるようになっていて、なおかつ情報が漏れない。ルールブック中2ページ使うだけある!
(デジタルなら一発だ、とかは言いっこなしだ! 全員が全員、誰のところに何が行ったか分からないシャッフルをアナログでやるのがこのゲームのみそだ!)

ゲーム本編は、オーソドックス。
ゲームは2モードあって、6人まで遊べる基本ゲームと、7人まで遊べる上級ルール。

基本ゲームは真ん中に仮想の7人目のプレイヤーの住人たちが置かれ、この7人の中からいち早く魔女3人を特定するもの。
こっちはサクサク終わるし流れも上級ルールをかなーり単純化しているので、割愛。

上級ルールは「失点をいかに抑えるか」というもので、失点になるのは誤って村人を処刑するか、誤って魔女を処刑しなかった場合に失点なります。

まず、各プレイヤーは順番に、自分の住人を1人ずつ捨てます。
この時、同じ数字の住人は、あと2人しか捨てられません。

これで、各プレイヤーの「魔女」は3人「村人」は3人だし、2枚捨てられた数字があれば、その数字の住人が魔女の可能性は高くなります(残り5枚中3枚が魔女)。

流れ的には:
「魔女狩り」で各プレイヤーの村人を1人ずつ投獄し、
「魔女裁判」でその投獄した魔女の中に何人の魔女がいるのかを明かし、
「絞首刑」で誰を処刑するのか投票すします。

魔女狩りでは、首つり縄マーカーを持っているプレイヤーが、他のプレイヤーの住人を1人選び投獄します(同じプレイヤーからは1人しか選ばれない)。

魔女面は本当は裏に――こいつは「魔女」だということは覚えておいてください。

この時、投獄された村人に関して、その住人のプレイヤーは他の住人との関連性でアリバイを申し立てます。
アリバイは3パターンありますが、使ったアリバイは全て使うまで再使用できません。

「裏切り」は、今投獄された人と同じ正体の人を教えるもの。
同じと言っても「同じ魔女」なのか「同じ村人」なのかはわかりません。

“3の人は4と同じなのよ! 同じなのよ!!”

「中傷」は、今投獄された人と違う正体の人を教えるもの。
違うと言っても牢屋に送られた方が「魔女」なのか「村人」なのかはわかりません。

“5は3とは違うぞ! 一緒にするな!”

「噂話」は、今投獄された人に加えて2人選び、その中に魔女が何人いるか教えるもの。
ただし、消去法で残りの3人の組み合わせの中の魔女の人数もわかってしまいますので慎重に!

“5と3と4の中に魔女が2人いるらしいわよ、奥様!”
“つまり緑の残った住人の中には魔女は1人いるな!”

3が魔女なのを覚えていた人は気が付くと思いますが……これはダメなアリバイの出し方の例。3と4が魔女なのがバレる。

この最初に捨てた村人と、いかにアリバイを出すかで自分の村人を守り、他のプレイヤーの魔女はどれかを推測することになります。
次に魔女を投獄するのは、いま住人が投獄された指定されたプレイヤーで、各プレイヤーの住人を1人ずつ牢獄に送るまで続けられます。

次に、実際にこの投獄された中に何人の魔女がいたかを魔女裁判で決めます。
自分の投獄された住人がどちらだったかをこっそり投票し、シャッフルします。
使わなかったカードを1枚ランダムに入れてシャッフル。
8枚のカードをオープンすると、牢獄にいる7人のうち、魔女の(ざっくりした)人数がわかります。

「魔女」か「村人」かランダムに加えられた1枚がポイント。

裁判の結果、7人の中に魔女は5人か、4人と言うことに……

最初に処刑された村人、アリバイ、自分の魔女からわかる情報……そして、牢獄に今何人の魔女がいるのかと言う情報……これらを鑑みて……絞首刑です。

ゲーム中はこんな感じでシートにアリバイ証言を記入して、推理していくことになる。

吊るしたい住人の色のカードを(好きな枚数)伏せてだし一斉にオープンして、1人でも投票していたら、その住人は処刑です(処刑に加担した場合、自分の色のマーカーを置く)。

これを4回実行した後で正体を明かし、村人を誤って処刑していた、もしくは魔女を処刑していなかった場合1点を得ます。

一番点数が少ない人が、勝者です。

わざと間違って村人を殺すのも、自分の魔女の正体を明かさないためには重要かもしれません……
まったく失敗してはならないわけではないことに注意……
村人1人処刑した失敗は、魔女1人を処刑すればチャラです!! チャラ!! どんどんやっちゃいましょう!!

このように、ゲーム自体はオーソドックスなマスターマインド系の推論ゲーム。
キモは、住人のシャッフルシステム。
あとは雰囲気ばっちりのコンポーネント……住人49人には細かい経歴つき!!

翻訳者が泣いた49人の実在人物経歴。

論理推論のゲームが好きな方にはお勧めですが、この雰囲気・テーマが好きだという人には、コンポーネントだけでも目を見張るものが有り、難易度もほどほどでプレイもしやすくオススメいたします。

セイラム
プレイ人数:3-7人
対象年齢:14歳以上
プレイ時間:90-120分
製作:Rock Paper Scissors Games / Passport Game Studio
デザイン:ジョシュア・バルヴィン
価格:7,000円+税