ノイエン:はーい!「萌黄の歌姫」ノイエンでーす!さぁ〜て、だいぶ南に下ってきました「アーカイアの車窓から」。第9回の今回は、トロンメル国内の最も東に位置する都市、フェアトラークからお送りします。
クアリッタ:こんにちは。瑠璃の歌姫クアリッタです。
ノイエン:このあとしばらくはトロンメル以外の都市を紹介していくので、トロンメルの「締め」ということで我らがクアリッタに来ていただきました!
クアリッタ:ただいまトロンメルの都市としてフェアトラークを紹介いたしましたが、詳しく言いますと、一部はシュピルドーゼ国内となっている国境(くにざかい)の町です。
町の中央を街道の一部でもある大通りが東西に通っていまして、石を密に並べた舗装道となっています。この大通りを、市街地のかなり東寄りの場所で横断している色の違う敷石の帯が、町の中での国境線を示しています。その国境の帯は、通りだけでなく町の南北に渡って敷かれていて、市街地東端を細い木の葉型に切り取っています。
ノイエン:その帯より西はトロンメル、東はシュピルドーゼということ。
トロンメル側はそれなりに町として発展しているけど、東側はそれに比べると質素なところです。 とはいえ歌姫大戦からこっち大きないさかいが起きることもなく、国の境とはいえポサネオ島への出入りのようなチェックがあったりはしません。
クアリッタ:シュピルドーゼ領である東地区を含めたインゼクテン・バルトの南地域は、シュピルドーゼ国内で忌避されがちなのだそうで、定住する人も少なく思うように発展しないようです。
ノイエン:どちらの国もインゼクテン・バルトを監視する軍の部隊がそれぞれの国内側の郊外に施設を設けて駐屯しているけど、その規模もはるかにトロンメルの方が大きくて、その人たちの生活に対応する商いなどがトロンメル領の街区発展の要因の一つです。
クアリッタ:そのような件が無ければ、アーカイアでも有数の遠浅の浜があるこの街は、景観も良いですし、独自の海産物をもちいた土地の料理はきっと味わいに訪れる価値のあるものです。
ノイエン:陸路でアーカイアを旅するのであれば必ず通る町で、それもリゾート地のハルフェアとの行き来に必要となるため、通りに人の絶えることの無いところです。
ポサネオへ行き来するだけでも、シュピルドーゼとハルフェアの2国の人たちがここを利用するわけで、遠浅の浜のために旅客船がないにもかかわらず常に旅人がいます。
クアリッタ:国の端ということから旅人に長い逗留を促す魅力が小さく感じられるようなのですが、一息ついてこの町を見回してみる余裕を持つと、快適な都市だとみなさん感じると思います。旅の日程に少しおまけをつけて、お泊りしてみてはいかがでしょうか。
ノイエン:そう!浜では泳げるし、浅い砂底はちょっともぐるだけで、とっても素敵な海底を見られます。おススメ。
クアリッタ:あら、到着した途端、浜に寝そべって日焼けを心配していたのは誰でしたっけ。
ノイエン:えっ!?やっぱ焼けちゃってるかな?
クアリッタ:・・・。大丈夫ですよ、そんな背中や二の腕を一所懸命に見なくたって。
ノイエン:よかった。「萌黄」が焦げちゃってちゃ、がっかりだものね。 さて、次回からはさらに東へ進んで、シュピルドーゼの国内からお送りします。それではまた次回!
クアリッタ:それではみなさん、ごきげんよう。

§ フェアトラーク(トロンメル)

地図
陸路で唯一、トロンメルとシュピルドーゼを結ぶ街道をつなぐ国境の宿場町。
人口の多い中心街はトロンメル側にあり、国境をまたいだシュピルドーゼ側には小さな宿場町としての町並みと同国の国境守備隊や蟲森監視守備隊の駐屯地があるのみである。
これはシュピルドーゼの多くの人々が、インゼクテン・バルトを原因としてシュピルディムとズェーデリヒハーフェンを結ぶ街道より西側を、忌避する土地と考えていることが影響している。任務やなにかしらの事情でフェアトラーク(の東区)に生活することになった人は、左遷だとか貧乏くじだと感じがちなのである。
それを反映し、この地域に展開しているシュピルドーゼの部隊とそれに関わる人々に定住者は少なく、任務で来た者は個人単位で数年勤めて別の地域や部隊へ異動ということが多い。その役割は国境の警備と蟲の森の監視という二つで、それぞれの任務について編成がなされている。

これに対しトロンメル側はシュピルドーゼの部隊を軽く凌駕する規模で郊外に駐屯しているが役割別の部隊ではなく、「東方面軍」という一括の大部隊である。その構成人員のほとんどはフェアトラークとトロンメル側の周辺住民で、その人々と一般の人々による町の発展と、旅人が宿泊することによる商業が都市としての発展をもたらしてきたと言える。
町の中の国境は道の舗装用の石の色の違いで示されており、かなり東寄りの位置で町を東西に区切っている。だが検問や壁などがあるわけではなく、境界線として意識するのは両国の軍属だけというのが実情である。

旅の歌姫が多い都市でもある。アーカイアの人々は15歳に達すると親からポサネオの「恵みの塔」についての口伝を学び、あるいは歌姫になる試験を受けるなどの理由があって20歳までに一度はポサネオに旅するのが一般的である(ポサネオに旅した人が必ず子供をもうけるというわけではない)。
その点で常にアーカイア全体で旅人が多いが、この町ではそれとはまた別に旅をする歌姫が、一人だったり複数人のキャラバンを組んでなど様々な形で見かけられる。

地理的な特徴としてはアーカイアでもっとも遠浅の海岸をもつ一帯であり、多量ではないがその海産物は食生活の面でこの地域に独自性を持たせている。具体的には遠浅の海岸でとれる甲殻類や貝類がよく食卓に並ぶ。 この浅瀬で網を使うことは、道具を傷めることが多いうえに収穫が多くならない。魚も多いがほとんどの漁師が浅瀬の沖の方まで平底の小船で漕ぎ出し、遠浅の砂底に住む魚を釣る。この釣竿が海岸の向こうに何本も立って見えるのが、好天の際のフェアトラークの風景である。 また、遠浅の向こう側でないと大型船が停泊できないため、アーカイアで最も長い桟橋を備えている街でもある。質が良く、水にも長期間耐えるとされる種類の木材で組まれた桟橋は、実際には歌姫大戦以前からある魔法の桟橋だと、町の老人たちは言う。
桟橋は、浅瀬が急激に深くなり始める地点まで伸びており、先端にはちょっとした広場程度が浅瀬の終わりに張り出すように設けられてはいる。ここから、上陸用の小船などで停泊本船との行き来をするのだが、貿易などに利用する利便性は無きに等しい。そのため海に面しているが旅客・海運とも盛んとは言えない。