ノイエン:はい、はーい。ノイエンでっす。今回の「アーカイアの車窓から」は、ヴァッサァマインの港町ヴォレアインカウフェから、ヴィオレッタさんと一緒にお送りします。
よろしくおねがいします、ヴィオレッタさん。
ヴィオレッタ:お久しゅう、ノイエン。
ノイエン:また、コートの季節でもなさそうですね。
ヴィオレッタ:あいかわらず装束が寒々しいぞ、ノイエン。相変わらず薄着であるな。
ノイエン:船の上では海風がちょっと寒かったけど大丈夫ですっ。
フェァマインよりは暖かい気がするんですけど、気のせいですか?
ヴィオレッタ:それはなかなか鋭いぞ、ノイエン。国土の大部分が高い標高の土地に乗っておるヴァッサァマインでは、海抜にあるヴォレアインカウフェはかなり暖かい地域ゆえ。
だが北海の水の冷たさゆえに、日が暮れてからの風には気をつけるがよいぞ。
ノイエン:なるほど。港町ですから、海と同じ高さですもんね。それじゃ他の国から来た人もあまり寒がらないですみそうですね。だから東海の4大貿易港にも名を連ねているわけですか。
ヴィオレッタ:それもあろうな。ヴァッサァマインにとっては、都のフェアマインからそう遠くなく、だが標高は低く大規模な港を設ける土地として、ヴォレアインカウフェがあったわけだ。標高が高いフェァマインとの行き来は、なかなか難儀であるゆえな。
ノイエン:ヴァッサァマイン国内で最大の港となるのは、宿命といった感じですね。
ザンドカイズ、ヴェステェンデ、ノルデハフェンシュタットの間に定期で貨客船がありますけど、いろんな国の船が入り乱れて、大変じゃないんですか?
ヴィオレッタ:定期航路便はファゴッツの商人の船の行き来であるからな。特に問題も起きぬ。
ノイエン:なるほど。『取引上手、旅上手』なファゴッツ商人ですもんね、さすがです。
ヴィオレッタ:沿岸沿いを航路として行き来するゆえ、ファゴッツ自体も含め各国の海軍が安全を維持している海上を行き来できる。その分、商売で各国に寄与しているわけであるな。旅客費も、他国で定期ではない船など使うのに比べれば、驚くほど低価格であるからな。
ノイエン:東沿岸は船便で移動してるけど、安くはないですよぉ。
ヴィオレッタ:それは当然であろ。海となれば、なにかあれば沈むであろうし、嵐などが来たときの危険度は陸の比ではないぞ。
ノイエン:うーん、船って手間、隙かかるんですねぇ。とっても快適な旅ができてたんですけど。
ヴィオレッタ:おぬしは一切心配なしなようだが、船酔いが酷い人には酷な旅であろうしな。どんな熟練した船乗りでも、それだけは手助けできぬでな。
ノイエン:ヴァッサァマインの人は、船酔いしやすいんですか?
ヴィオレッタ:難しい質問であるな・・・。内陸の住人であれば、一生、甲板を踏まぬ者もおるゆえ。
少なくともこの町の住人のほとんどは、船に強いと言えようか。外洋船でなくとも、町の中の水路を小船で荷を運ぶくらいの仕事は、この町の住人であれば、幼いという程のころからでも体験するゆえ。
ノイエン:水に親しむ町なんですね。北には船は行かないんですか?
ヴィオレッタ:定期航路はないが、季節の折には、海岸沿いにノルディキュステから北海岸の生産物を輸送してくることもあるぞ。
ノイエン:それじゃ虹諸島や翼風諸島なんかにも、バーンバン行っちゃうんですか?
ヴィオレッタ:沿岸を離れた航海は困難を極めるゆえ、波が高くなくとも、翼風諸島への航海などは命がけぞ。
ノイエン:そうなんですか。船の運航って、難しいんですね。
ヴィオレッタ:そうだぞ。ゆえに船酔いくらいで責めてやるでない。
ノイエン:べつに責めてませんよぉ。この先は船旅じゃないんで、クアリッタも元気になりますから心配なし!
というところで、今回はヴァッサァマイン国内最大の港町、ヴォレアインカウフェからお送りしました。
ありがとうございます。ヴィオレッタさん。
ヴィオレッタ:うむ、北道を行くならもう少し着た方がよいぞ。よい旅を、ノイエン。
ノイエン:はーい。ではでは。

§ ヴォレアインカウフェ(ヴァッサァマイン)

地図
アーカイア東岸4大貿易港の最北の港にして、フェァマインの衛星都市。海に面しないだけでなく、標高の高い台地に乗ったフェァマインやその周囲にとって、海の玄関口となっている。ヴァッサァマイン北方の生産物を船便で集積してくるため、収穫期には大市場となる都市でもある。また、フェァマインからは中規模の河川、シュネーフルスによって水路が確立している。
ヴァッサァマインの人々の中でも、この都市の人々は特に海への憧れが強いと言われる。その評判にたがわず、ファゴッツの船でさえ余程の事がなければ行かない、翼風諸島への船旅などを決行するのも、ヴォレアインカウフェの船がほとんどである。
それだけに航海術の研究も盛んで、その技術と知識においては黄金の工房や、知識の司と言われる闇蒼の歌姫、その膝元で研究をしている学者や歌姫に引けを取らないといわれている。 その中では、虹諸島よりも北の海へ行ったり、翼風諸島やシュヴァルツ・カップより、はるか東へ漕ぎ出した航海者の伝説や言い伝え、その人々の見聞だとまことしやかに言われる風聞など、逸話にも事欠かない。
多くのヴァッサァマインの人々が歌術を理解し、切磋琢磨するなかで、もっとも冒険心に富む人々とも言える。