ノイエン:はーい!萌黄の歌姫ノイエンでーす!「アーカイアの車窓から」今回は、武の国シュピルドーゼは、首府のシュピルディムからお送りします。
ゲストには、久しぶりの登場、ブリギットさんをお迎えしてます。
ブリギット:久しいな。よろしくおねがいする、ノイエン殿。
ノイエン:どう?ステキな機奏英雄と出会えた?
ブリギット:そ、それは違う話題です、ノイエン殿。今日は我が国の首府、シュピルディムをみなさんに紹介するはず。
ノイエン:そうだけど、前回、それなりに紹介してあるから、いいかなー、とか思って。
ブリギット:私の記憶が確かなら、通りが広いことと、奇声蟲と絶対奏甲の戦いに備え、建築が一定の強度を持たせることが義務付けられている、といったことぐらいだったはずだ。
ノイエン:よく覚えてますね。おっしゃるとおり、危機が訪れて、黄金の歌姫が再び機奏英雄を召喚し、絶対奏甲が奇声蟲と戦うことを前提に、通りはスペースを大きく取って、絶対奏甲が利用しにくい背が高い城壁の代わりとできるよう、建物は一定の強度で作るように決まっています。
ブリギット:そのとおり。『対奇声蟲絶対迎撃都市』とノイエン殿は表現されていたな。インゼクテンバルトの東に位置していることから、いざという時に最も絶対奏甲が必要とされるであろう場所として、市街地でも絶対奏甲を効果的に運用し、支援できるよう、整えられているのだ。
ノイエン:なるほどなるほど。だけど町の住人全員が軍人というわけでもないんでしょう?市場があったり農家があったりするはずだもの。
ブリギット:もちろんそうだ。町の中央、凱旋門周辺では、国軍がデュミナス女王のもと、常に準備万端に備えている。その兵たちの食事や生活のまかない、使う道具や武具の製作や補修、街道を行き来する部隊や旅人の宿泊などを、生業としている者たちは多い。人は武力のみで生きるわけではないからな。
ノイエン:「兵站」ってやつですか?
ブリギット:それももちろんだが、それだけでは国や国民の生活が立ち行かないことは、デュミナス様はご存知だ。衣食住はもちろんだし、それ以外もたとえば、国内の鉱山から産出する鉱物の取引は多い。鉱物そのものは、鉱山から取引先へ直接輸送されるから、町の中に産出物の山ができるということはないがな。
ノイエン:町の中に山ができたら、さぞ邪魔でしょうね。大体、そんなに大量に運べないだろうし。
ブリギット:うむ。ほとんどはノルデハフェンシュタットに集積され、船で輸送される。
ノイエン:なるほど。船ならある程度の量を運べるわけですね。ほかにこの町の特徴というと何でしょう?
ブリギット:都の西にはインゼクテンバルトがあるが、逆に東側は広い平野であるので、作物などはそこから集まってくる。起伏が少なく、危険も少ないため、太い街道や大きい宿場町はないが、道は整備されていて平和な地域となっている。
ノイエン:食べ物は都に入ってきて、人々に買われたり、取り引きされるわけですね。
ブリギット:商売や物の流れにそれほど詳しくはないが、やはり人が多く、売り買いが多い場所が栄えて、大都市や都となるのではないだろうか。
ノイエン:ルリルラなんかは、首都というにはみんなみんなのんびりしてますけどね。
ブリギット:ハルフェア出身のノイエン殿を前にしてなんだが、ハルフェアの人々は、少々楽観的すぎるのではないだろうか。休暇にハルフェアへ行かないこともないのだが、周囲ののんびりしていることに、落ち着かない気分になることがある。
ノイエン:それはブリギットさんが、まじめで几帳面だからですよ。ハルフェアでは、その緊張も緩めないと、行く意味がないですよ。
ブリギット:ううむ、確かに休暇であるから、力は抜いてリフレッシュするべきなのだろうな。
ノイエン:そのとおりそのとおり。今度、私がいるときにルリルラに来てもらえたら、いい湯を教えますよ。落ち着くし、肌も綺麗になるし、って取っておきがあるから。
ブリギット:それはかたじけない。
ノイエン:と、ここで時間が来てしまいました。ブリギットさんの機奏英雄探しについては、またお預けです。残念。
ブリギット:べつに残念ではないぞ!
ノイエン:そうですか。今回は鋼鉄の都シュピルディムからお送りしましたぁ。ありがとうございます、ブリギットさん。
ブリギット:うむ、かたじけない。それではこれで失礼する。
ノイエン:ではでは、みなさんまたねぇ〜っ。

§ シュピルディム(シュピルドーゼ)

地図
デュミナス女王が座す、鋼の都を冠される武の国シュピルドーゼの都。
アーカイアの東方平原という恵まれた地域に位置するが、西に蟲の森(インゼクテンバルト)があるため、恵みを享受するのは東側地域に限られる。その平原では農作、酪農のほか、多くの鉱山も点在しており、従事する人々も多い。この資源の豊富な平原が、シュピルドーゼの産業国の力を支える。
作物などはこのシュピルディムに運ばれ、市場で販売、取り引きされるのがほとんどだが、鉱物については取引人が交渉や契約をするのみで、産出物がこの都市へ運び込まれることはない。これはノルデハフェンシュタットへ運ぶほうが、二度手間にならないことと、建物の強度について規則があるように、都市内の街路や街の使用可能な空間を、無断で大きく変えてはならないと決められていることによる。
街の周囲の城壁は低いが、アーカイアで最も厚いと言われている。「最も厚い」とされないのは、フェアマインの歌術によって強化された城壁と比較されるためで、長期間にわたって戦争がなく、実際に防戦に役立ったか、あるいは突破されたか、という歴史的事実がないため、確定されないのである。
また、通常の造りの城壁では奇声蟲が易々と登ってしまうことと、一方で絶対奏甲は、一部の飛行能力が備わっている機種を除いけば、城壁は障害となると考えられたため、シュピルディムの城壁は低い。

町の中央には、歌姫大戦よりはるかに過去に建てられた凱旋門がある。中には絶対奏甲が座るような、巨大な玉座がしつらえられているが、絶対奏甲の発明よりも過去に建立されたことは間違いなく、象徴的なものであると解釈されている。
この凱旋門外装の意匠は、ハルフェアの都ルリルラ周辺の遺跡や、一部の温泉で見られるような古いものとなっており、識者の興味と議論の種となっている。
また元来、アーカイアでは"凱旋門"という概念はなかったが、近年になってから機奏英雄の誰かが、フランスの凱旋門を思い出し、そう呼んだらしい。その名と意味を、武の国であるシュピルドーゼの人々が気に入って、それ以来この建築物はアーカイア全般において「凱旋門」と呼ばれるようになった。